第27章 顕如 討伐作戦☆光秀・政宗
(顕如!!)
顕如は 大股で小屋に近づくと、開いたままだったらしい扉から中へと入って行った。
すると、「申し訳ござません!」と叫びながら黒装束の男が小屋を飛び出して行った。
少しして顕如も小屋を出る。
そっちの道徳心は残っていたようだな。
そう思っていると、遠くから馬の掛ける音がする。
ん?蹄の音…もしや、お館様か?
『ここは君主に花を持たせるとするか。』
光秀は そう呟き、信長に見つからぬよう馬を引き、その場を去った。
離れた場所で馬に跨り、安土城を目指し ひた走る。
政宗にバレないうちに帰らないとな。
九兵衛が冷や冷やしながら待っていることだろう。
『さて…。』
何故 あきら之丞ごときで 俺はこんなに必死になっているのだ。
からかえば腹を立ててむくれ、触れれば顔を赤くして俯く、その反応が面白く、楽しんでいただけだった。
ただ、それだけ。なのに…。
『守りたいと…いや、この腕に抱き締めたいと思うのは何故だ。』
この時代、男色家は決して珍しいわけではない。
だが、それともまた違う、この気持ちは何なのだ?
小高い丘に差し掛かった時、不意に足元からざわめきが聞こえてきた。
そっと伺うと、多くの人影が競り合っているのが見える。
顔までは確認出来ないが、あの旗印…。
『秀吉と家康か。』
顕如の軍が予想より早く打って出たらしい。
しかし見る限り、秀吉達が押しているのは明白だ。
興味無さげに目を逸らした光秀が、また走り出す。
… … …
いつの間にか城の裏門が目の前にあった。
なんとか ばれずに帰ってこれたな。
裏門をくぐると、見慣れた顔がある。
『何も告げず、こんな時間にお出掛けか?本当に呑気だな。それとも…何かあったのか?』
政宗が こちらを探るような目で見ている。
『おや、政宗が お出迎えとは珍しいこともあるものだな。』
『誤魔化してんじゃねえぞ。』
こいつも意外と聡いからな。
『…ばれてしまったか。実は城下に懇意にしている女がいてな。会いに行っていた。』
正宗は一瞬 目を見開くと、問いただす。
『いい加減にしろ。お前が自ら動くくらいだ、何かあったんだろ。九兵衛とやらは なかなか頑固で口を割らないしな。』
こいつ一体 九兵衛に何をしたんだか…。
ここは正直に言うしかなさそうだ。
諦めて光秀が事の次第を話す。