第27章 顕如 討伐作戦☆光秀・政宗
『先ほど信長さま御一行は、顕如率いる黒装束の一団に出くわしたとのこと。』
ピクリとと光秀が眉を寄せる。
『御一行は無事、三成さまの計で切り抜けられた模様ですが…。』
一呼吸置いて、さらに表情を曇らせる。
『山奥の廃寺にお隠れになっていた所、1人で外に出ていたあきら之丞さまが 何者かに連れ去られたと…。』
『なんだと!?』
珍しく光秀が声を荒げた。それに驚きながらも九兵衛が続ける。
『目立たぬようにと、信長さま自ら お一人で捜索に出られた模様です。』
全てを言い終わると、九兵衛が部屋の隅に下がる。
こんなに早く こちらの餌にかかるとは。
俺とした事が、抜かったな…。
『俺も出る。政宗にバレると色々うるさい。お前が俺の身代わりに ここにいろ。』
そんな!と慌てる九兵衛をよそに、するりと部屋を出る。
忍びのように、物音を立てずに厩舎の裏手へ向かう。
こんな事もあろうかと、物陰に一頭の馬を隠しておいたのだ。
静かに馬に跨ると暗闇の中に掛けて行った。
光秀は1人、山の中をひた走る。
どれ程走った頃だろう。目の端に古びた小屋のような物が見えた。
馬を側の木に繋ぎ、小屋の裏へ身を寄せると、なにやら人の話し声がする。
『あきら之丞?』
間違いない、この声は…。
壁の隙間から中を伺うと、黒装束の男らしき人影が見えた。
目をこらすと、その下に組み敷かれている人の姿がある。
(あきら之丞!!)
光秀は、駆け出そうとして踏みとどまった。今 自分の所在がばれては2人とも危険だ。
だが このままでは…。
焦りながら辺りを見渡すと、少し先に 別の人影がある。
光秀は おもむろに足元の石を拾って、その背中に投げた。
とんっ!と背中に当たった音がする。
その人影が振り向いて、こちらにやってくる気配がした。
悪い方に転んだ時は…全て切り捨てるだけだ。
そっと小屋の陰から覗けば、その人影が誰だか解った。