第26章 顕如 討伐作戦☆秀吉&家康
家康が言い終わらないうちに、スヤスヤと寝息を立ててあきらが眠りに落ちた。
その髪を まだ撫でながら家康が呟く。
『あきら之丞が顕如に捕まって怪我したって聞いた時は、目の前が真っ暗になった。三成の奴、何やってんだって思った。
でも一番腹が立ったのは、俺があきら之丞の側にいなかったこと。』
はぁ、と ひとつ、家康が ため息をつく。
『信長様に頼み込んででも着いて行けば良かった。
そしたら、怪我しても すぐに手当てしてあげられたのに。
そもそも俺はあんたに怪我なんかしてほしくないんだけど。』
髪を撫でていた手があきらの頬を包む。
何で男のあきら之丞に、こんな気持ちを抱くのか解らない。
俺は男色家じゃない。でも…。
『これ位は いいでしょ。』
…チュッ。
小さな音を立て、あきらの おでこに口付けを落とすと、家康は静かに部屋を出て行った。
… … …
秀吉は落ち着かない様子で部屋の前廊下をウロウロと歩いている。
スッと襖が開いて家康が出てくると、飛びかからんばかりに近づいて来た。
『あきら之丞は大丈夫か!?』
『うわっ!びっくりした…。今、眠ってます。疲れたんでしょうね。怪我は本人が言う通り、そんなに酷くありませんけど、綺麗に治るまでは少しかかるかと。』
家康がそう言うと、心底ホッとしたように秀吉が微笑む。
『中、入っても大丈夫か?』
『ぐっすり寝てますから大丈夫ですよ。』
おでこに口付けしても気付かない位に。
そうか、と言いながら秀吉が あきらの眠る部屋に入っていった。
スヤスヤと寝息を立てて眠るあきらの姿がある。
布団から出ている手首は、ぐるぐると白い布が巻かれ痛々しい。
秀吉が ぐっと奥歯を噛む。
囮作戦なんて、いくらお館様の仰ることでも、やっぱり反対するべきだった。
いくら顕如を捕まえられたとはいえ、もしかしたら死んでいたかもしれない。
三成が言うには、捕まった際、顕如の手下に乱暴されかけたとか…。
『うーん…。』
ゴロン、とあきらが寝返りを打つ。
布団がはだけて足元が見えた。
『足もか。』
秀吉が そっと布が巻かれた足首に触れる。
『すまない。俺がもう少し城を経つのが早ければ。』
そう言うと苦しそうに顔を歪めた。