第25章 顕如 討伐作戦☆信長&三成
『あきら之丞!あきら之丞!』
井戸の奥に向かって信長が名前を呼ぶ。だが返事は無い。
『待っていろ!必ず助ける。』
井戸に向かって叫ぶと、信長は馬に跨り急いで走り出した。
先ほどまでいた廃寺…確か、あそこに荒縄があったはずだ。
信長の顔は、いつになく強張っていた。
… … …
あきらは、ぴちょん!という音で目を覚ました。
背中が冷たい。
『み…水?』
上を見ると小さく丸く星空が見える。
『ここって…井戸?』
幸い使われていない間に溜まった落ち葉と残っていた水がクッションになり、たいした怪我はしていないらしい。
ゆっくりと体を起こす。井戸の内壁に岩が出っ張った部分があり、あきらは どうにか立ち上がると、そこに腕の縄を擦り着ける。
しばらくするとプツンという音とともに、縄が足元に落ちた。
やった!両手が自由になった!でも…
『この高さは登れないか…。』
天を仰いで溜息をつく。
どうすることもできず、またそこにへたり込む。着物が水に濡れて気持ち悪い。
それに、もう夜中だ。風が入らないとはいえ、濡れた体からは、どんどん体温が奪われていく。
『寒い…。』
あきらは いつの間にか意識を手放していた。
…どれ位経った頃だろうか。誰かが呼ぶ声がする。
『あきら之丞、目を開けろ。あきら之丞。』
誰だろう。なんだか怖いけど懐かしい声だな。
『あきら之丞!』
すると今度は はっきりと解った。信長の声だ。
あきらは信長の腕の中に抱かれ眠っていた。
『あ…れ?信長…さま?』
あきらが再び目を開けると、あの廃寺だった。
心配そうに見つめる三成や家臣達の姿がある。
『私は 一体…。』
頭がぼーっとして思考が働かない。
『貴様は、俺の身代わりになろうと顕如から逃げ、古井戸に落ちたのだ。気を失っているお前を荒縄で縛り上げ助けた。』
縛り上げ…って
『あっ!顕如達は!?』
思わず叫んで体を起こすと、信長があきらの体を きつく抱き締めた。