第25章 顕如 討伐作戦☆信長&三成
そんなの、駄目!!
咄嗟に体当たりして顕如の腕を解くと、あきらは男達の間をすり抜けて小屋の後ろ側へと走り出した。
一瞬、気を取られた男達を信長が馬で蹴ちらす。
数人があきらの後を追って行ったようだ。
信長は男達を刀で切り伏せながら顕如へと近づいた。
ガキン!!
金属同士が激しい音を立ててぶつかる。
数太刀め、信長の刀が 顕如の喉元に触れた。
赤い物が 顕如の首から流れ落ちる。
『くっ…。』
小さく顕如が呻く。にじり寄っていた黒装束の男達も、動きを止めた。
『今日は これで手打ちだ。』
そう言うと、信長はあきらが走って行った方へと馬で消えて行った。
暗闇に混じり合い見えなくなる その姿を目で追いながら、顕如が顔の傷を押さえる。
『くそっ!なぜ さっさと殺さん!貴様なら俺の首をはねられたはず…なぜ今更 情けをかける!』
眉間の皺を深くして唸るように呟いた。
…あきらは、後ろを気にしながらも、女の自分なら通れる様な細い岩の間や、木々の隙間を縫って走る。
とはいえ、両手が縛られた状態では 歩いている様なものだが。
はー、はー…。
今日は相当カロリーを消費してるだろうなぁ。
最近、秀吉に貰ったお菓子を食べ過ぎてたから、いいダイエットになりそうだ。
少しの間、大きな木の幹に体を預け息を整える。
また走り出そうと体を起こした時、目の前で声がした。
『見つけたぞ。』
このいやらしい声…先ほどあきらを襲おうとした男だ。
慌ててあきらは走り出す。
もつれる足をなんとか動かし数歩走った時、足元の土が崩れ、ふっと視界が暗くなった。
『え…』
そのまま あきらの体は真っ直ぐに落下していく。
ドサッ。
あきらが落ちる音を聞いて、男が走り寄り覗き込む。
『古井戸か。…この深さでは生きてはおらんか?』
すると、遠くから馬がかけてくる気配がする。男は そのまま その場を離れた。
『どうどう!』
信長が馬を静止させる。誰かいた様な気がしたが、気のせいか。
ヒラリと馬から飛び降り辺りをうかがう。
足元には一面に湿った枯葉が落ちている。その上に、幾つかの足跡があった。その足跡を辿ると、少し先で土が崩れ落ちている。
そっと覗き込むと、古い井戸のようだ。
まさか…。