第25章 顕如 討伐作戦☆信長&三成
『お前、何をしている。』
『け、顕如様…。』
開けたままの扉から、いつの間にか顕如が小屋の中に入って来ていた。
『危害を加えるな、と…言ったはずだが?』
顕如が静かに呟くと、男は「申し訳ござません!」と言いながら大慌てで小屋から逃げて行った。
顕如が一つため息を吐く。
た、助かった…。
『…まさか お前が信長の弟君だったとはな。それで本能寺にいた事も納得がいく。』
うっ。やっぱり あの時、顔を見られてたんだ。
…怪我の功名か、信長の弟だというのは信じてくれているらしい。
『私を捕まえてどうする気ですか。』
あきらは震えそうなのをこらえ、顕如を睨む。
『もちろん、お前を使って信長をおびき出し、奴の息の根を止める。…お前には何の怨みも無いが、あいつの弟として産まれた事を呪うんだな。』
『ははっ!信長は確かに私の兄ですが、血は繋がっておりません。ですから、誰も助けになど来ませんよ。捕えていても時間の無駄だ。』
あきらは なるべく平静を装い、そう言い捨てる。
その言葉を聞き流して、顕如が続ける。
『じきに こちらが蒔いた足跡を辿って、お前の味方が現れるだろう。それまで、もう少し じっとしてて貰おうか。』
そういうと、顕如は出て行った。
何も出来ない悔しさに歯を食い縛る。私が軽率な行動をしたせいで、信長さま達が危険に晒されているなんて。
… … …
丁度その頃、信長は森の中を用心深く走っていた。
森の木や草が、道を作るように折れたり踏まれたりしている。
『追って来いということか。いいだろう、貴様の罠にはまってくれるわ。』
そう呟くと、信長は馬を飛ばす。
程なくして、一軒の小屋が見えてきた。
どこからともなく、刀を手にした黒装束の男達が現れ、信長の前に立ちはだかる。
その向こうからあきらを引き摺って、顕如が ゆっくりと歩いてくる。
『お前自ら やってくるとはな。見上げた根性だ。』
眉間に皺を寄せ、信長を睨みながら顕如が言う。
『一応、この俺の弟なのでな。痛い目にあいたくなければ、そやつを還して貰おう。』
信長が馬上で刀を構える。
黒装束の男達も一斉に信長ににじり寄った。
『それはこちらの台詞だ、といいたいところだが…いいだろう。お前が首を差し出すというのなら、弟君を還してやる。』