第25章 顕如 討伐作戦☆信長&三成
『思ったより早く食い付いて来たな。』
信長が呟く。しかし表情は変わらない。
暫く走り続けると谷が見えてきた。
『信長さま、この谷に誘い込みましょう。』
三成は言うか早いか先陣を切って走り出した。
細い谷間の道をスピードを落とさずに走り続ける。
あきらは着いて行くのがやっとだ。息が苦しい…。
『こちらへ。』
三成の言葉に一行はカクンと右に折れる。
そこは洞窟になっており、一行は岩陰に息をひそめた。
はぁ、はぁ…
着物の袖で口元を覆い、あきらは乱れる息を整える。
一拍置いてドドドドッと馬の蹄の音がかけていく。
段々とその音は遠くなり、やがて辺りに静寂が戻った。
『まだ別動隊がいるかもしれません。信長さま、あきら之丞さまはこちらでお待ちを。お前達、着いてこい。』
三成が数人の家臣を連れて洞窟を出て行った。
はぁぁー。あきらが思わず息を吐く。
『あきら之丞、平気か?』
『はい、何とか。』
まだ心臓バクバクいってる。怖かった…。
そんなあきらの頬をふわりと撫で、信長がはっきりとした口調で言う。
『心配するな。貴様は必ず俺が生かす。だから笑っていろ。』
不思議だ。信長がそう言うと本当に大丈夫な気がする。
あきらは微笑みを返した。
暫くすると偵察に行っていた三成達が戻って来た。
『近くにそれらしい者はいないようです。今の内にここを離れましょう。少し行ったところに廃寺があります。一旦そちらへ。』
解った、と信長も了承する。
一行は辺りを伺いながら谷を抜け、山の中をひた走る。
必死で走っていたせいで、木に若竹色の着物が引っかかり少しだけ裂けたことにあきらは気づかない。
~~~ ~~~ ~~~
『信長め…逃げ足の早い奴よ。』
顕如が顔を歪めて囁く。そこに黒装束の1人が走り寄る。
『顕如様、これをご覧下さい。』
男の手には若竹色の布地が握られていた。
『これは…!』
先程 信長の後ろを走っていた男が着ていた着物…?
確か信長は寵愛する弟と一緒に城を立ったとか。この着物の色からして多分これが…。
『これを何処で見つけた。』
『はい、村外れの廃寺へ向かう道でございます。』
『ふっ、信長め。今度こそ息の根、止めてくれるわ…行くぞ。』
顕如一行も信長たちの後を追う。