第25章 顕如 討伐作戦☆信長&三成
暫くのち、準備を整えた信長一行は、城の門前にいた。
『信長さま、どうぞお気を付けて。我々も数刻後、出立致します。三成、信長さまとあきら之丞を頼むぞ。あきら之丞、お前は決してお館様から離れるな。』
いつになく真剣な顔で秀吉が告げると、皆が
『お前は心配し過ぎだ。』
『はい、必ずお守り致します。』
『うん、解った…。』
3人三様の返答をする。
『秀吉、家康、軍備に抜かりはないな。光秀、正宗、城は頼んだぞ。いいな。』
はっ、とそこにいた武将以下、家臣達が一斉に返事をする。
『いくぞ。』
信長を先頭に、三成、あきら、そして十数名の兵が門をくぐり、夜の帳の中へと消えていく。
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暗い夜道を信長の一行が、ゆっくりと進んでいた。
あきらは信長と三成に前後から挟まれる位置で馬を走らせている。
馬のかける音と息遣いだけが静かな中にやけに響く。
静か過ぎて、もう顕如達は何処かへ行ってしまったんじゃないだろうか?という思いが頭をよぎる。
『あきら之丞さま、お疲れではありませんか?』
三成が時折、気遣わしげに声を掛ける。
『うん、大丈夫だよ。ごめん、私の後 走りにくいよね。』
乗れるようになったとは言え上手く操れているとは言い難い。
『紅(くれない)、お前も大変だろうけど付き合ってね。』
あきらは信長に貰った馬に「紅(くれない)」と名前を着けていた。すると信長が振り返り、
『紅というのは、その馬の名か?』
と聞いてきた。
あ…勝手に名前なんかつけたこと怒られるかな。
あきらが体を縮める。
『紅毛の馬だから紅か。ふっ、単純なお前らしいな。』
呆れられてる?
『…だが、いい名だ。』
そう言うと信長が薄く微笑んだ。
その時。
右手の林からザザッという音と共に馬に乗った黒装束の一団が現れた。
『信長!覚悟!』
その最前には顕如の姿がある。一団の数は50人程だろうか。
少なくとも、こちらの倍以上はいるらしい。
瞬間、信長が叫ぶ。
『飛ばすぞ!』
その掛け声を合図に信長一行はスピードを上げる。
ここで囲まれたらひとたまりもない。
あきらも遅れないように必死に馬を走らせる。