第22章 先生☆秀吉
部屋に着くと、抹茶のいい香りが鼻をくすぐる。
秀吉が正座をして、茶碗に入れた抹茶を茶筅で点てていた。
『お、来たか。ちょっと待っててくれ。』
頷いてあきらは秀吉の前に座る。
シャカシャカと小気味良い音がして、段々と抹茶が泡立っていく。
しばらく泡立ててから、秀吉は くるりと茶筅を回し、そっと持ち上げる。
ふわりと泡立った その茶碗をあきらの前に差し出した。
『まず、茶碗を右手で持って左手に乗せる。飲む時は茶碗の正面を避ける為に、右に2回 回す…。』
秀吉から一通り簡単に説明を受け、やってみろ、と言われて、あきらが丁寧にお辞儀をする。
『お点前 頂戴いたします。』
えーと、右手で茶碗を持って左手に乗せて…秀吉の説明を頭の中で復唱する。
ごくっ。
『!!美味しい!お抹茶って もっと苦くて不味いと思ってました!』
あきらが つい思ったままを口にする。
しまった!
不味いと思ってたって言っちゃった…。
慌てて秀吉の顔を見ると、ぽかん、と口を開けたあと噴き出すように笑う。
『そうか、気に入って貰えたなら良かった。茶の道は奥が深い。興味があるなら、また教えてやるぞ。ほら、甘味も食べろ。』
今日のは干菓子だ。茄子や筍、ひょうたんなどを型どった小さな姿が愛らしい。
『可愛いお菓子ですね。食べるのが勿体ないくらい。』
『こいつらも可愛い奴に食われるんなら本望だろ。』
ん?
今、サラッと可愛いって言われたような…。
『あ、いや、その可愛いっていうのは弟みたいで ほっとけないというか…アチっ!』
1人焦って弁解する秀吉が、横に置いてある湯桶を倒しそうになる。
『だ、大丈夫ですか!?というか、秀吉さんでも焦る事があるんですね。新しい一面を見れて得した気分です。』
冗談めかしてあきらが言うと、
『こーら。大人をからかうな。』
と、少し赤い顔の秀吉が諭す。
可愛いのは秀吉さんの方だな、と思うあきらだった。