第22章 先生☆秀吉
『あ…いだだだだ…。』
信長の乗馬訓練の翌日から、激しい筋肉痛に襲われている。
歩く度に痛みで顔が歪む。歩き方も何だかぎこちない。
『…あきら之丞、それは新しい踊りかなにかか?』
そんな姿を見て秀吉が笑いながら声を掛けた。
『ひ、秀吉さん!』
秀吉さんには私、変な姿ばっかり見られてるような…と思いつつ、信長に乗馬訓練をして貰った事を話す。
『あぁ、そうだったのか。初めて一人で馬に乗ったんなら変な所に力が入ったんだろうな。
しかしお館様は何の考えもなしに そのような事をやる方ではない。きっと、あきら之丞は織田軍の…信長さまの力になると思われたから稽古をつけて下さったんだ。』
ぽんぽん、とあきらの頭を撫でながら秀吉が言う。
期待されてる…ってことなのかな。成り行きとはいえお世話になっている身、そう思って貰えたのなら嬉しい。
『ま、あんまり頑張り過ぎて体調を崩さないようにな。』
あきらと同じ目線になるように腰を屈め、秀吉は垂れた目尻を一層下げた。
『そうだ、あきら之丞、また旨そうな甘味を仕入れたんだが、食べるか?』
『え、いいんですか!?』
思わず大きな声で叫んでしまった。恥ずかしい…。
『あっはっは。あきら之丞は男のくせに甘味に目が無いんだな。よし、折角だ。お前に茶の道を教えてやろう。』
そう言う秀吉の後をカクカクとした足取りでついて行く。
先に準備しておくから、と秀吉が先に行く。
あきらが歩き辛い事を知って、ゆっくり来いと言っているのだろう。
ああ、秀吉さんって本当に優しい。私もこんな優しいお兄ちゃんが欲しかったなぁ。