第21章 先生☆信長
『そんなに手綱を強く引くな。馬が驚いて振り落とされるぞ。
『なんだ、その屁っ放り腰は。体を起こして腹で支えろ。』
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『うむ、なかなかさまになってきたな。お前にこの馬をやる。時間がある限り訓練して1人で乗りこなせるようになれ。』
そう言うと信長はひらりと馬の背から降りた。
『あ、あの、信長…さま…。』
息も絶え絶えにあきらが呟く。
『なんだ、なにか文句でもあるのか?』
『いえ、文句とかではなく…お、降りられないのですが…。』
先程までは後ろに信長の温もりがあった。そのお陰で自然と安心していたのだろう。
温もりが無くなった途端、あきらは恐怖と日頃の運動不足がたたって足腰に力が入らない。
泣きそうな顔のあきらを見て信長が目を見開いた。
『貴様は…世話の焼ける。』
あきらの腰を支え信長がそっと馬から降ろしてくれた。
足がカクカクして上手く歩けない…。
『貴様は産まれたての小馬か。にしても…貴様、軽いな。ちゃんと飯を食っているのか?』
信長がまじまじとあきらの体を見る。
『しっかり食わんと体も強くならん。早く強くなって俺の最高の駒になるんだな。』
冷たい言葉とは裏腹に優しい目をした信長の姿があった。