第21章 先生☆信長
今日は朝から信長に呼び出され、あきらは天守へと向かっている。
そういえば初めてだな。信長さまが私に何か手伝いを頼むのって。
こき使ってやれー!と言っていた割には、信長に手伝いを頼まれた事は無い。
まあ、それだけ忙しい人だと言う事もあるだろうが。
『信長さま、あきら之丞です。宜しいでしょうか?』
襖に声を掛ける。
『入れ。』
そう言われて襖を開けると、信長は外出する準備をしていた。
『あの…お出掛けになられるのですか?』
呼びつけといて何処かへ行くなんて…と思っていると、
『お前も来い。』
と信長が言う。
何処へ…と尋ねる前に、信長はスタスタと天守を出て行く。
それを慌ててあきらが追い掛ける。
外へ出ると、信長は厩舎(きゅうしゃ)へと向かう。
馬に乗って何処へ行くんだろう。
すると一頭の馬を厩舎から出し、あきらの前に連れて来た。
あきらが きょとん、としていると、
『何を惚けておる。貴様、体が弱いと言っておったが馬には乗れるのか?』
『え!?いえ、乗ったことがないです。というか触ったこともありませんが…。』
ふんっ、と信長が鼻で笑った。
『戦の時は騎馬戦が有利だ。馬ごとき乗れんようでは 俺の駒にもならん。稽古をつけてやる。乗れるようになれ。』
なれって言われても…。どうしていいのか解らず固まっていると、
『阿呆、乗れるようになれと言っている。さっさと馬にまたがらんか。』
と信長が冷たい瞳であきらを睨む。
『ですから私は触ったことも…うわっ!』
言い終わらないうちに信長は馬にまたがると、グイッとあきらを馬上に引っ張り上げた。
まるで信長の腕の中に横抱きにされているような格好だ。恥ずかしくて真っ赤になっていると信長が一喝した。
『さっさと馬をまたいで前を向け!』
…そうして みっちりと信長の乗馬訓練が行われた。