第19章 初めてのお使い☆謙信
え、なに?
あきらが戸惑っていると頭上から謙信の声がする。
『体が弱いと言っていたな。…咄嗟のこととは言え驚かせて悪かった。』
そう言うと腕を解いた。
び、びっくりした…。あ、驚いてる場合じゃなくて!
『あの、度々すみません。実は私、帰り道が解らなくなってしまって。無礼を承知でお願いしますっ!大通りまで案内して頂けないでしょうか!?』
あまりにあきらが可哀想に見えたのか、謙信はくるりと向きを変えて歩き出しながら言った。
『まったく…。着いてこい。』
良かったー!助かったー!あきらは飛び上がらんばかりに喜んだ。
暫く黙って謙信の後ろを着いて行くと見覚えのある通りに出た。
『ここでいいのか?』
『はい!謙信さま。ありがとうございます!何かとご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。』
あきらが深々と腰を折って礼を告げる。
謙信は何も言わず来た道を戻っていった。
ふと、あきらを抱き留めた感覚を確かめるように手のひらを見つめて呟く。
『あんなに細い男も、いるのだな…。』
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少しあと、安土城の城門では、心配して仁王立ちで待っていた秀吉に、こっぴどく叱られるあきらの姿があった。