第2章 出会い☆信長
『貴様、名は?』
名前を聞かれて、あきらは咄嗟に男の名前で答えていた。
『え…あきら之丞です…。』
幸い、足首まであるストライプのガウチョパンツは、さながら袴のようだ。
長い髪はポニーテールにしてある。
『あきら之丞か、いい名だ。
俺の名前は織田信長。いずれ天下を統一する男だ。』
へー、そうですか…信長…。
『信長!?』
『いきなり呼び捨てとは、貴様 大層な身分だな。』
恐る恐る、あきらが たった今逃げて来た建物を伺うと
【本能寺】
門扉にそう書かれていた。
まさか…とはおもうけど、
『…すみません、ちなみに今は何年でしょう??』
『?天正10年だ。貴様、年も解らん腑抜けか。』
うわー、聞いた事の無い年号…。
後半、軽くバカにされてる気もするなぁ。
とにかく、落ち着くために 一旦この場を去ろう。
『すみません、私、急用が出来たので、お先に失礼します!』
そう言って去ろうとするあきらの腕を信長が掴んだ。
『面白い…。俺は貴様を手元に置いておきたくなった。貴様、天下人の元で働く気はないか?』
『あ、ありません!!』
あきらは掴まれた腕を振りほどいて夜の闇へと走り出す。
男名前を語ったのは、きっと動物の勘のようなもの。
平和な今とは違い、こんな世の中で女だと言ったら、何をされるか解らない。
そう思ったからだ。
あきらは一度ギュッと目を瞑り、再び夜の闇へと走り出した。