第17章 初めてのお使い☆幸村
『あれ?幸村!?』
『あ?おー、おまえ あの時のイノシシ!』
『イノシシは失礼だってばっ!』
まったく、可愛い顔してるくせに口が悪いな幸村は!とあきらは思った。
『っていうか、幸村って行商人なの?』
幸村の座る前には赤い布が広げられ、その上に綺麗なかんざしや帯留めが所狭しと置かれている。
今でいうアクセサリーショップといったところか。
『おー、色んな町に行ってる。安土には暫くいるつもりだけどな。』
と幸村が答えた。ふーん、と言いながらあきらが幸村の前にしゃがみ込む。
『どれも綺麗な細工だねー。』
花を形どったもの、鳥を型どったもの…。あ、これ可愛いなぁ、と中の1つを手に取る。桜模様の簪だ。
『物は保証するぜ。腕のいい職人が作ってるからな。あきら之丞も好きな女子になんか買ってったらどうだ?』
へ!?あ、そうか。今は私、あきら之丞(男)なんだっけ。
『いや、私は好きな子いないから…。』
俯いてあきらが答えると、
『ふーん、そうなのか?お前、結構 男前だからモテると思ったのにな。ま、俺には劣るけど。』
と幸村が軽口を返す。
男前って…カッコいいって言ってくれてるんだろうけど、なんか複雑。
『そういう幸村はどうなの?どんな子が好きなわけ?っていうか、もう誰かそういう人いるの?』
と、あきらが茶化すように聞く。
すると幸村はクルリと向こうを向いてしまった。
『なんだよー、教えるくらいいいじゃないかー。』
幸村の前に回り込み覗き込むと幸村の頬が赤く染まっている。
え…?
『う、うるっせぇ!買う気が無いんなら帰れよな。商いの邪ー魔!。』
なんで幸村は照れているんだろう?好きな子の事でも思い出したのかな?あきらが首を傾げる。
『お前なー、男のくせにその仕草、可愛い過ぎだから。気を付ねぇと変な輩に目ぇつけられんぞ?』
え!?か、可愛いって言った?思わずあきらの顔も赤くなる。