第16章 初めてのお使い☆秀吉
それから数日は、またあれやこれやと皆の手伝いをして忙しく過ごした。あきらにとっても余計な事を考えなくて済むので、ありがたい。
『あきら之丞、ちょっといいか?』
すれ違いざまに秀吉に呼び止められる。ボーッとしてたの見られちゃったかな、とあきらが肩をすくめる。
『ははっ。別に歩いてる時にどんな顔してても俺は気にしないぞ。』
やっぱ、ばれてる…。
『そうだ、あきら之丞、この書簡なんだが急ぎ城下にある店に届けて欲しいんだ。』
秀吉さんによると、戦支度で必要になる品物のリストらしい。
細々とした部分に間違いなく戦が近づいているんだと知らされる。
『これが地図だ。ごめんなあきら之丞、一緒に行ってやれたらいいんだが、どうしても今 手が離せないんだ。』
申し訳なさそうに秀吉が言うと、あきらはクスッと笑った。
『秀吉さんが行ったら、私の行く意味がありませんよ。』
それもそうだ、と2人で笑い合った。
少しして、城下への道を1人歩くあきらの姿があった。
『はー、城下町って どんなところかなぁ。』
ワクワク、という形容詞が聞こえてきそうだ。
それもそのはず、この1ヶ月、あきらは城の外に出ていない。
暫く歩くと、沢山の店が見えてきた。町に足を踏み入れると、人々の活気のある声が耳に心地いい。実は出かける前、秀吉さんが『駄賃だ。何か好きな物でも食べろ。』と、こっそりお小遣いをくれたのだ。
まったく子供扱いして…と思いつつ、あきらのワクワクの半分を占めていた。
まずは仕事を済ませなくては…とガザゴソと懐から地図を出し、目的の店を探す。
『あ、ここだ!』
方向音痴のあきらではあったが、案外すんなり目的の店を見付け、店主に書簡を渡し終えた。
やりたい事があると、仕事もはかどるようである。
『さーて、夕餉までに帰ればいいって言われたから まだ たっぷり時間あるな。』
取り敢えず、食事処や反物屋など 目に付いた所を覗いてみる。
露天も たくさん出てるんだなぁ〜と通りを見渡したあきらの目に、知った顔が映った。