第15章 女だから☆佐助
『はぁー。』
後ろを振り向きもせず自分の部屋の前まで一気に歩いてきたせいか、さすがに息が上がっている。
襖を開けて中に入ると、
『やぁ、あきらさん、こんにちは。』
『うわっ!ムグムグ…。』
あきらは、叫びそうになるのを自分の手で口を押さえ、必死に堪えた。
部屋の真ん中に、きちんと正座をして佐助が座っていたからである。
『び、びっくりさせないでよ!心臓飛び出すかと思った…。』
『あぁ、だから手で押さえていたんだね。』
いや佐助くん、それは比喩ってやつで実際に出たら大ごとだよ。
すとんと佐助の前に腰を下ろしあきらが尋ねる。
『で、なんで私の部屋に佐助くんがいるの?』
『必ず会いに行くって約束したから。』
恥ずかしくなるようなセリフを真面目な顔で言われて、あきらは思わず赤面した。
『実は、俺はあきらさんより四年前の時代に飛ばされててね。手に職をつける為に忍者の修行をして、その傍らタイムスリップ現象について調べていたんだ。』
佐助くんって転んでもただでは起きないタイプだな、とあきらは思った。
『それで、3ヶ月後にまた、本能寺辺りでワームホールが発生するのを突き止めたんだ。』
『わーむ…ほーる?』
聞きなれない言葉にあきらが首を傾げる。
『時空のある一点から別の離れた一点へと直結する空間領域でトンネルのような抜け道の事だよ。俺たちがこの時代に飛ばされた時、嵐の中みたいなとこにいたの憶えてる?』
あ…確かに。雨が降り出して、だんだん酷くなって、雷が鳴ったと思ったら白い霧の中にいて…。
『それが出現するって予測出来たんだ。3ヶ月後には現代に帰れる。』
はっきりとした佐助の言葉が頼もしい。あきらは、佐助といると自分を男だと偽らなくていいせいか、とても気楽だった。
『だからあきらさん、あと3ヶ月なんとか頑張って。
俺も来れる時には会いに来る。ただ…。』
佐助は言いにくそうに言葉を詰まらせた。
後の言葉を待っていると意を決して佐助が続ける。
『もうすぐ大きな戦が始まるかもしれない。』
戦という言葉に、あきらがピクッと眉をよせる。