第14章 男なのに☆光秀
折角なので三成か教えてくれた中庭に行ってみる。
南側って言ってたから多分こっちのはず…。また迷ったかな?とあきらが心配になっていると、目の前に綺麗な緑が見えた。
『わぁー!大きな池!』
庭には大きな池に飛び石があり、岩や石灯籠がバランスよく飾られていてとても美しい。
植えられている木々は派手では無いが、きちんと刈りそろえられていて、まるで一枚の絵のようだ。
その美しい光景に暫く見とれていて解らなかったが、離れた廊下の隅に同じように庭を眺める姿があった。
あれは…
『光秀さん?』
出来ればあまり関わりたくないのに、思わず名前を呼んでしまい、しまった!という顔をする。
そんなあきらの気持ちを知ってか知らずか、ゆっくりとあきらに視線を向けながら光秀が呟く。
『ん?あきら之丞か。なんだ?寂しくて俺を追い掛けて来たか?』
いつものニヤリという笑いを浮かべながら。
『いえ、それだけは絶対にありません!中庭が美しいと耳にしたので見に来ただけです。もう帰ります。失礼しました!』
一気にまくし立てクルッと背を向けて歩き出す。
『…待て。』
いつの間にか背後に立っていた光秀に肩を掴まれる。
じっと何処かを見ている様子。
『この手はどうした?』
あぁ、とあきらは自分の左手の平を見やると、怪我の経緯を説明しヒラヒラと振ってみせた。
『大したこと無いのなら良かったな。こんな布を巻いていたら、せっかくの美しい手が台無しだからな。』
光秀は、そう言ってあきらの手の平を優しく撫でた。
布の上から撫でられただけなのにドキドキと鼓動が早くなる。
それを悟られまいと、あきらは光秀の手を払いのけた。
『美しいなどというのは好きな女子に言う事でございましょう?
大の男に向かっては いささか失礼では?』
あきらは わざと怒った顔でそう言った。
『…大の男、か。しかし、あきら之丞は怒った顔も可愛いな。』
光秀は笑みを絶やさぬまま楽しそうに言う。
ダメだ、無視して逃げよう。
あきらはペコッと礼をすると、今度は捕まらないように小走りでその場を去った。
『…男にしては華奢すぎると思うがな。』
光秀は何かを考えるように、小さくなるあきらの背中を見つめていた。