第13章 男なのに☆三成
秀吉の私室から出てあきらは再び城の中を散策していた。
『秀吉さんがくれたお菓子、美味しくて食べ過ぎちゃった。もう少し散歩しよう。』
少し歩くと顔見知りの女中がいた。
『あ、こんにちは。』
『こ、こんにちは、あきら之丞様!』
女中は頬を染めながら挨拶を返す。
私は表向き織田家ゆかりの武将ということになっているから、彼女も緊張しちゃってるのかも。
『あきら之丞でいいよ。様なんてくすぐったいしね。』
とあきらが笑うと、そんな訳にはいきません、と言いながら礼をして女中は去ってしまった。少し離れた所に数人の女中が集まって何やらこっちを見ながらコソコソと話している。
別に聞き耳を立てているわけでは無かったのだが、あきらの耳に女中達の会話が聞こえてきた。
『三成さまも格好いいけれどあきら之丞さまも可愛くて素敵よねーっ!』
『あの子供の様に首を傾げる仕草、堪らないわっ。』
『私は誰にでも同じ態度で接してくれる所に惹かれるわ。』
と口々に三成やあきら之丞の事を話している。
えーっと…これは、好きだって言われてるのかな?
思わずまたあきらが首を傾げると、キャーッと黄色い声が聞こえる。
は、恥ずかしい。なんだかとっても恥ずかしい!
『あきら之丞さま、どうかなさったのですか?』
いつの間にか目の前に立っていた三成が不思議そうにあきらの真っ赤な顔を覗き込む。
すると女中達の黄色い声が更に大きくなった。
『きゃーっ!一度にお二人を拝めるなんて今日は何ていい日なのかしらっ!』
『ねぇ、折角だからお声掛けてみましょうよ。』
『はて?彼女達は何のお話をされているのでしょうね?』
さっぱり解らないという顔の三成の腕を引っ張り、あきらが女中達とは反対方向に歩き出す。
ここにいたら2人とも揉みくちゃにされそうだ。
『み、三成さま、そうだ、私、読みたい本があるのですが!』
『おや、あきら之丞さまも本がお好きなのですね。嬉しいです。』
人を昇天させかねない笑顔を浮かべながら三成が微笑む。だから、今その笑顔はヤバいんだってば!
『あきら之丞さま、ですが、書庫は向こう…。』
言いかける三成を無視してズンズンその場を歩き去る。