第12章 男なのに☆秀吉
あ、少しは疑いが晴れた?とあきらは目を見開く。
秀吉さんには未だに疑われてたもんなぁ。
『あきら之丞、今、暇か?』
秀吉が優しい顔であきらに尋ねる。
『はい、今日はまだ特に頼まれごともありませんし。何かお届け物ですか?』
すると秀吉が、着いてこい、とあきらを手招きする。
何処に行くんだろう?そう思いながら辿り着いたのは秀吉の私室だった。
『あきら之丞、そんな所に突っ立ってないで中に入れ。で、そこ座ってちょっと待っててくれ。』
と机の前の座布団に座るよう即された。
書簡整理の手伝いかな?と考えていると、暫くして秀吉が、お盆にお茶とお菓子を載せてやってきた。
『こないだ仕事で城下に行った時に旨そうだと思って買ったんだが…あきら之丞は甘味は好きか?』
『はい!大好きです!』
思わず大きな声で返事をすると、あはは、と秀吉が笑う。
しまった、また子供みたいだと思われた。
『そうか、なら良かった。まだたくさんあるから、好きなだけ食べていいぞ。茶もあるからな。湯呑みが熱くなってるから火傷しないように気を付けろよ。』
秀吉が甲斐甲斐しくあきらの世話を焼く。
『なんか…秀吉さんって、お母さんみたいですね。』
くすくす笑いながらあきらが言うと、せめて父親にしてくれと秀吉に苦笑いされた。
『じゃ兄上ですね。父親ほど歳は離れてませんもん。』
閃いた!というようにあきらが言う。
秀吉は、どこか照れ臭いような嬉しいような気持ちで、あきらの言葉を聞いていた。
俺に弟がいたらこんな感じなのか?と。
『はぁ〜、美味しかった!秀吉さん、ご馳走様でした。』
あきらは丁寧に頭を下げる。そしてこう付け加えた。
『私、男の割に料理が得意なんです。今度お礼に何か作らせて下さいね。』
襖の前でもう一度礼をして去っていくあきらに、愛おしい感情が芽生えている秀吉であった。