第12章 男なのに☆秀吉
安土城にお世話になってから、毎日 何かと手伝いを頼まれていたあきら。
今日は特に何もないから、と久し振りに 朝からのんびり過ごしている。
『はぁー。急に暇になると やる事無いなぁ。』
テレビもスマホも この時代には無い。
『散歩でもしよっ。』
手伝いで城の中を歩き回っているとはいえ、安土城は広い。まだ見た事も無い部屋や庭もある。
うーん、でも勝手に歩き回ったら マズいかな。
…ばれた時は ばれた時だよね!あきらの理性は 簡単に感情に負けるらしい。
キョロキョロ辺りを見回しながら、ゆっくりと廊下を歩く。
途中すれ違う女中達に不思議そうな顔をされるが、ニコニコ笑いながら通り過ぎた。
『いやー、本当に広いなぁ。…迷った。』
ため息混じりに頭を抱えていると、前から知った声が聞こえる。
『あきら之丞?お前、こんなとこで何やってるんだ?』
眉間に皺を寄せ、秀吉が近づいてくる。
『返答次第では…切る。』
初めて会った頃の、険しい顔をした秀吉に切られてはたまらないとあきらが慌てて告げる。
『道に…迷いました。』
一瞬の沈黙の後、表情を崩した秀吉が笑い出した。
何かおかしい事 言ったかな?あきらは小首を傾げる。
『いや すまない。お前がまるで迷子の幼子のように見えたものでな。』
幼子…って、子供に見えたってこと!?
あきらがムッとする。
『そんなにむくれるなよ。立派な男に向かって失礼だったな。悪い、許せ。しかし、方向音痴じゃ間者は無理だな。』