第11章 男なのに☆政宗
なんとか書簡を届け終え、あきらは急いで台所へと向かう。
次は昼餉の支度をする政宗を手伝うのだ。
『うわぁ、書簡を届けるのに手間取って遅くなっちゃったよ。政宗さん、怒ってるかも…。』
ガラッと台所の戸を開ける。政宗の後ろ姿が見えた。
『政宗さん、すみません!遅くなりました!』
あきらが折れそうな勢いで腰を曲げる。
『あぁ、遅いな。さっさと この辺の野菜剥いてくれ。』
振り向きながら、手は休めずに政宗が言う。
『はい!』
料理は結構 好きなんだよなぁ〜。あきらは手頃な包丁を借り、人参やジャガイモを手際よく剥いていく。
『へぇー、お前 以外と器用なんだな。』
感心したような声が肩越しに聞こえて、あきらはビクッと肩を揺らした。
振り向くと、すぐ後ろに政宗の顔があった。
驚いて包丁が手から滑り落ちる。
『おい!大丈夫か!?』
とっさに政宗があきらの体を後ろに引っ張ってくれたお陰で、あきらの足は串刺しにならずに済んだようだ。
すると、政宗が眉を寄せて尋ねた。
『おい、怪我したのか?』
政宗があきらの左手を掴んでいる。
『いいえ!これは さっき書簡を運んでいる時に 紙の端で切ったもので…家康に薬も塗ってもらいましたから大丈夫です。』
『そうか。ならいいが無理はすんなよ。ま、家康の薬 塗ったんなら すぐにでも治るだろ。…ところで、俺の事も政宗でいいぞ。そんなに肩肘張らねぇで、友達と話すみたいに喋って大丈夫だ。』
政宗はいつもの色気を含んだような顔で微笑むと、また食事の支度に戻った。
… … …
暫くして、台所には美味しそうな匂いがたちこめていた。
『美味しそ〜!政宗は料理 上手なんだね。』
お腹空いた〜、とあきらが思った時、政宗が出来立ての料理を箸でつまんだ。
『フッ!あきら之丞、口開けろ。』
『え?』
(パクッ)
『美味しい!!』
今まで食べた現代の料理よりも 全然美味しい!
『そうだ、俺の料理は美味しそう、じゃなくて美味しいんだ。解ったら さっさと運ぶぞ。』
たくさんのお膳を軽々と運ぶ政宗の後を、あきらも遅れないように着いて行く。
政宗は心の中で(犬っころみたいで可愛い奴だな)と思うのだった。