第9章 出会い☆光秀
もう朝餉もあらかた終わる頃、広間に誰かが入ってきた。
その男は すすっと信長の側へ歩み寄る。
『ただいま戻りました。』
『ご苦労。それで、光秀。なにか収穫はあったか?』
漏れ聞こえる会話に、あきらは、この人が明智光秀なのだと悟る。
『はい、放っていた斥候が、有力な情報を得て戻りました。本能寺で信長さまを葬ろうとしていた者の名でございます。』
ニヤリと光秀が笑う。
『して、その名は?』
他の武将達も その言葉に注目しているらしい。
『は、 まだ不確かな情報ではありますが、浄土真宗 本願寺派の高層、顕如と。』
『…なるほどな。』
信長の瞳が妖しい色を帯びた。
ん?なんで お坊さんから恨まれてるんだろ?
『寺を焼き払った恨みか。神に仕える身にしては心根の狭い奴よ。』
信長がボソッと呟いた。
この人は お寺を焼いたって言ったの!?
『どっかのお寺を焼いて、本能寺で自分が焼かれてりゃ せわないよ…。』
『なにか言ったか?あきら之丞?』
思わず囁くようにあきらが言った独り言。
『いえ!なんでもっ!』
あきらは慌てて かぶりを振った。
『…続けても?』
光秀がチラッと信長とあきらを見る。
『続けろ。』
信長の低い声の後に、光秀が話し出す。
『顕如は、思いを同じくする同宗派の僧達を集め、更なる戦を仕掛けようと画策している様子。信長さま、いかがいたしますか?』
ザワザワと広間が ざわつく。
『光秀は引き続き顕如を追え。政宗は諸国の動向を探れ。秀吉と家康は部隊の準備を整えろ。三成はここに残れ。討伐の策を練る。』
『『『『『はっ!』』』』』
全員か厳しい顔で返事を返した。
私は何もしなくていいのかな…。そんなあきらに気付いた光秀が
『なんだ?自分も何か やりたそうな顔だな?』
と声を掛けた。そして、ニヤッと意地悪に微笑むとあきらの顎をすくいながら言った。
『俺の相手でもするか?綺麗な男なら可愛がってやらんでもないぞ?』
ひーっ!と悲鳴を上げて後退りするあきらを、クックッと可笑しそうに笑い、光秀は広間を出て行った。
顔 近過ぎるし!でも綺麗な顔だったなぁ…いやいや、し、心臓に悪いっ!
光秀の背中を見送りながら、寿命が縮む思いのあきらなのであった。