第60章 愛しい☆幸村
あれよあれよと言う間に、戦でボロボロの着物を剥ぎ取られ、金銀箔や刺繍が入った豪華な着物を羽織らされる。
ボサボサの髪も手早く結い上げられた。
鏡の中に映るあきらは立派なお姫様に見える。
『お殿様方がお待ちでございます。どうぞこちらへ。』
女中の1人に手を取られ言われた方へと歩く。
宴が始まっているらしく、襖の向こうから賑やかな笑い声が漏れ聞こえていた。
女中が声を掛け襖を開けると、一斉にあきらの元に視線が集まった。
『おぉ~!これはこれは…。』
『あきら姫様、なんとお美しい!』
家臣たちから口々に称賛され恥ずかしさに思わず下を向いた。
遠くからバタバタと大きな足音がしてピタリとあきらの前で止まる。
『お前…なんて格好してやがる!』
顔を上げると、耳まで真っ赤な幸村が立っていた。
『幸村…赤揃えみたいに真っ赤だよ。可愛い。』
思わず考えた事を口走ると、ドッとその場にいた家臣達が笑う。
『うるせぇ!ちょっと飲み過ぎただけだ。風に当たってくる。お前も付き合え!』
幸村に引っ張られるようにして廊下を進む。誰もいない広間に入ると、幸村は そっとあきらを抱き締めた。
『あきら、綺麗だ。このままずっと床の間に飾っときてぇ。』
『ふふっ、ありがと。最高の褒め言葉だよ。』
『…って嘘。』
えぇっ!?驚いて幸村を見つめる。
『やっぱり、着物の中身が気になって我慢できないから、俺。』
幸村が着物の帯をほどく。
熱い口付けをあきらの体に落としながら。
『あっ…。』
その度にあきらから儚い吐息が漏れた。
白い肌には桜の花弁が舞い散る。
月明かりだけが2人の輪郭をなぞっていた。