第61章 愛しい☆佐助
ところで佐助くんは何処行っちゃったんだろう?
佐助くんと私は悩んだ末、信玄さまにお供することに決めたのだ。
絶対に自分の城に来ると思っていたらしい謙信さまからは斬りかかられてたけど…。
『どうしたんだ?あきら。相変わらず百面相してんな。』
幸村の憎まれ口も相変わらずだな。
あ、そうだ、幸村なら佐助くんがどこにいるのか知ってるかも。
『ねぇ幸村、佐助くん知らない?少し前までその辺りにいたと思うんだけど。』
『お前、聞いてないのか?隣国で怪しい動きをしてる輩がいるっていう情報が入って、佐助の奴、信玄さまの命令で偵察に行ったぞ。』
『えっ!?もう別の仕事に行ったの?うん…聞いてない。』
思いの外しゅんとしているあきらを見てマズいと思ったのか付け加える。
『いやほら、あいつは優秀な忍だからな。信玄さまの信頼も厚くて頼まれ事が多いんだよ。なーに、すぐに帰ってくるって。いのしし女が、んな顔してたら調子狂うぜ。』
幸村が頭を掻く。必死に慰めているのが伝わってきて、くすっと笑ってしまった時だった。
『幸村の、しれっと母性本能をくすぐる所、真似してみたいな。』
あきらが飛び上がって驚くと、いつの間にか2頭の馬の間に佐助が立っていた。
『さ、佐助くん!?いつもながら神出鬼没だね。
…って、もう お仕事終わったの?』
『うん。人の三倍の速さで動いているからね。』
本気なのか冗談なのか解らない…。
でも、一緒にいてくれるとやっぱり安心するな。
『あきらさん、その気の抜けた顔は、あまり他の奴らには見せないように。城に着くまでが遠足だよ。』
遠足って…。
『お、見えてきたぞ。あれが信玄さまの居城「躑躅ヶ崎館(つつじがさきやかた)だ。』
幸村が指差す先には、美しい水堀と緑豊かなお屋敷が見えた。
『うわぁ~!信玄さまの心みたいに広くて綺麗なお城だね!』
目を輝かせて城を見つめるあきらを、佐助は目を細めて眺めていた。
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館では宴が行われようとしていた。
『織田軍との戦が終わったと言っても、他にも よろしくない輩が暗躍していると聞く。皆くれぐれも気を抜くことのないように。とはいえ今日は無礼講だ。
心行くまで飲んで騒いで、ゆっくり休め!』
高座にいる信玄さまの合図で、みんなが手に手に盃を掲げ宴が始まった。