第60章 愛しい☆幸村
『お前の方が よっぽど疲れてるだろ。』
ぽんぽん!と紅にしたのと同じように、幸村から頭を叩かれた。
『私は大丈夫だよ。幸村の方が色々…その、大変だったね。』
『んんー…まーなぁ。まさかあきらが戦 終わりにあんなこと言うと思わなかったから。』
幸村が呆れた顔をして笑った。
無理もない。
信長達との激しい戦いを終えた後、私は幸村の家臣達の前で、自分が女であることを告白したのだ。
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それはもう、おもちゃ箱をひっくり返したような大騒ぎになった。
罵られても無視されても仕方ないと腹をくくっていたのだが、その矛先は何故か幸村に向いた。
『幸村殿!なぜもっと早く教えてくださらないのです!あきら様は どちらの姫様なのですか!?』
『は?いや…筑後の遠い親戚の娘でな。暫く預かって欲しいと言われて…。』
『なんと!そんな大事な姫様に男(おのこ)の格好までさせて戦場に連れてくるとは!』
『いや、それはだな…そうそう!女(おなご)だが剣の腕が立つもので…。』
『なに?聞き捨てなりませんな。我らではそんなに頼りにならんとお考えか?』
幸村が侃々諤々(かんかんがくがく)攻め立てられている。
しばし呆気にとられていたあきらだったが、
『あのっ!幸村もみんなも、なんか…ごめんなさい!』
さすがに申し訳なくて頭を下げた。
くるっ!と家臣たちが振り向いて叫ぶ。
『『『あきら様が謝ることはありませぬ!』』』
…そのあとも暫く弄られて今に至るというわけだ。
『でも俺は嬉しかった。みんながあきらを、女とか男とかじゃなく人として大事に思ってくれてるのが解ったからな。』
回りの家臣達を見渡しながら言う幸村、嬉しそう。
私も嬉しかったよ。それはきっと幸村もみんなの事を大事に思ってるから。
『お、見えてきたぞ。あれが俺の城「上田城」だ。』
目の前には立派な大石の積まれた石垣や櫓がそびえ立つ。
『うわぁ~、風格のあるお城だね。』
そうか?と照れ臭そうに幸村が頭を掻いた。
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城の一室に連れてこられたあきらは、数人の女中に囲まれていた。
『な、なんでしょう?』
顔をひきつらせていると、
『城の者達からあきら様にと、心ばかりの贈り物でございます。』