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イケメン戦国/偽りの君

第58章 愛しい☆謙信


暫く歩くと、沈む夕陽に照らされて高い山の上に城が見えてきた。

『これが春日山城…。』

威風堂々そびえ立つ城を仰ぎ見る。

『なかなかにいい城だろう?』

謙信があきらに声を掛けながら、その横に並ぶ。

『はい。本当に立派なお城です!でも物凄い山の上にあるんですね。
こんな山道なのに、みんな全然 疲れてなさそう…。』

あきらが素朴な疑問をぶつける。
周りにいる家臣の皆は、特に息を乱すでもなく平然とした顔で山道を登っていた。

『越後兵は深田の農作業で足腰を鍛えられているからな。
…深田というのは、胸の辺りまで浸かってしまうような深い田の事だ。』

あ…。
今、解らないだろうと思って丁寧に説明してくれた…?

『ふふっ。』

嬉しさに笑みがこぼれる。

『ん?どうした?』

『いえ、謙信さまって優しいな、と思って。』

『俺が優しい?何処がだ?』

本当に解らないらしく首を捻っている。
すると側にいた家臣達が口々に話し出した。

『謙信さまは義に厚く、誠にお優しい お方です!』

『戦場では必ず先頭に立ち、我らを鼓舞して下さるのです!』

『男らしく、卑怯な事はなさらない正義の武将です!』

わぁわぁと自分を褒め称える家臣達を見ながら、謙信が苦笑いする。

『…困った奴らだ。』

口調とは裏腹に、その眼差しは柔らかだった。

『ところで、謙信さまは今まであれほど頑なに女子を避けていらしたのに、その…。』

ひとりの家臣がボソッと呟く。
女の人を避けてた!?
ん?と言う顔であきらが見つめると、静かに謙信が口を開いた。

『己への戒めだ。俺には侍女もおらん。』

侍女もいないのなら身の回りの世話は誰がやってるんだろう。
そんなあきらの疑問に答えるように謙信が続ける。

『大抵の事は自分でやる。男どもも手伝ってくれるしな。』

『そうなんですね。…それじゃ謙信さまの身の回りのお世話、これからは私にやらせて下さい!』

謙信が少しだけ目を見開き、小さく頷いた。
そうこうしているうちに、一行は春日山城の本丸へと辿り着いた。


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