第55章 愛しい☆三成
誰もいない事を確かめると、湯殿の中に入り素早く湯浴みを済ませた。
外に出て部屋へと歩いていると、後ろから呼び止められる。
『あきらさま。』
私を本当の名前で呼ぶのは…。
『三成くん?』
足を止め振り向く。
にっこりと微笑む三成と目が合い、あきらがはにかむ。
一歩、二歩と三成が近づいてくる。
『湯浴みされていたのですか?』
『うん。汗とか埃で汚れてたし。』
『そうですか。あきらさんは、いつもいい香りがしますね。』
あきらの胸元に鼻を寄せる。
ピクッとあきらが体を震わせると、おや?という顔で三成が続けた。
『まだ髪が濡れていますね。乾かして差し上げますので私の部屋へいらして下さい。』
『だ、大丈夫だよ、このくらいすぐ乾く…。』
言い終わる前に、三成があきらを抱き抱えた。
『大丈夫ではありません。お風邪でも引いては大変です。
それに、私の部屋の方が近いですから。』
それが当たり前のように微笑を浮かべ三成が言う。
ずるいよ三成くん…。そんな笑顔で言われたら断れるわけないじゃない。
何も言えずにいるあきらを抱えスタスタと歩く。
部屋に着くと、そっと畳にあきらを座らせる。
高価な物にでも触れるような手つきで、三成が優しくあきらの頭を手拭いで拭う。
ただそれだけなのに、あきらの心臓はバクバクと大きな音をたてた。
『はい、乾きましたよ。』
と三成が声を掛ける。
『あ、ありがとう。』
真っ赤な顔であきらが礼を述べた。
『あきらさま?お顔が赤いようですか、もしかしてのぼせられたのでは!?』
慌ててあきらの頬に手を当てる三成が可愛くて、思わず吹き出す。
『え?なにか可笑しかったですか?』
カッコよくて天然って…萌えポイント満載だよ、三成くん。
『私がのぼせてるのは、お湯じゃなくて三成くんにだよ。』
あきらがクスクスと笑う。
暫く意味が解らず固まっていた三成が目を見開く。
『それは…私の事を気に入って下さっているということでしょうか?』
『ふふっ。そういうことです。』
そっと三成の手に自分の手を重ねる。
『光成くんが、私の心の癒しだったの。』
優しい光成の笑顔にどれほど救われただろう。