第52章 愛しい☆秀吉
汚れた着物と袴を脱ぐと、あちこちに擦り傷や青くなった打撲の跡があった。
あーあ、我ながら痛々しい。現代なら考えられないよ。
体を洗う間も軋むように痛んだ。
戦の間は気が張っていて、痛みにも鈍感になっていたのだろう。
ちゃぽん…。
湯船に浸かると傷に湯が染み込んで更に痛む。
『うーっ!のんびり浸かりたいけど、また今度っ!』
痛みに耐え切れず湯船から飛び出した。
そっと体を拭いていると、外から誰かの声がする。
『あきら之丞、入っても平気か?』
あ、秀吉さんの声だ。
そうだよね、他のみんなも入りたいよね。
急いで持ってきた着物に袖を通す、
『はい、もう上がりましたのでどうぞ。』
着替えた着物を、さっとまとめて持つと扉を開ける。
『すみません、お先に頂きました。ごゆっくりどうぞ。』
扉に手を掛けあきらが出て行こうとすると、体ごと湯殿に押し戻された。
『わっ!』
よろつくあきらの肩をしっかりと秀吉が掴み顔を赤らめる。
『そんな身なりで出て行くな。他の奴らがお前の事を女と知らなくとも、それじゃ襲ってくれと言ってるようなもんだぞ。』
え?慌てて下を向くと、胸元が はだけて膨らみが見えている。
『わっ!ご、ごめんなさい!』
あきらが慌てて着物の前をかき合わせる。
『あ、いや、こっちこそ すまない。用がある訳では無かったんだが、あきら之丞の事が心配でな。怪我は していないか?』
優しい瞳で秀吉が見つめている。
『はい、大丈夫です。擦り傷と青痣くらいですから。』
その瞳を見つめ返すと、秀吉の顔色が変わった。
『なにっ!?痣が出来たのか?何処にだ!?まったく、女なのに 痣なんか作って…って戦さ場に連れて行ったのは俺かー!』
頭を抱える秀吉が可愛くて、独り言のようにあきらが呟く。
『ふふっ、秀吉さん、可愛い。』
『…可愛いのは お前だ。』
頭を抱えていた手があきらの頬を包む。
ゆっくりと秀吉の顔が近付き、労わるような口付けをする。
『多分、初めて会った時から お前の事を愛しいと思っていた。気付かないふりをしていたんだ、俺は。』
秀吉の片手があきらの背中を抱き、もう片方の手が着物の合わせ開く。