第51章 愛しい☆家康
ガラリと扉を開けると、黄色い着物が目に飛び込んできた。
『ん?…い、家康っ!?』
家康が棚に背を預け腕組みをしている。
あきらが入ってきた事に気づくと、ゆっくりと腕を解き歩み寄る。
『あ、ごめん、入ってた?出直します!』
慌てて回れ右して出入り口へ向かおうとするあきらの腕を、家康がパシッと掴む。
『どこ行くの?』
『どこって…部屋に戻ろうかと。』
きょとんとしながらあきらが言うと、盛大な溜息が聞こえた。
『はぁー。あんたさ、俺の言った事すっかり忘れてない?』
『家康が言った事?』
はて、なんだっけ?私、何か言われた?
『まあいいけど。忘れてるんなら思い出させるだけだし。』
そう言いながら、家康があきらの腰に手を回し着物の帯をほどき出す。
『ええっ!?何してるの?』
慌てふためいて家康の手を掴む。
『だから言ったでしょ?あきらの事ベタベタに甘やかすって。体、洗ったげる。』
な…!?
『自分で洗えるから大丈夫だよっ!』
『大丈夫じゃないから。』
そっとあきらの右手を掴む。
『城に戻ったらきちんと手当してあげる、って言ったのに全然 部屋に来る気配無いし。
もしかして忘れて湯浴みでもしてるんじゃないかと思って来てみれば案の定。
この手じゃ痛くて洗えないでしょ?』
『いや、左手もあるし!』
と言うあきらを無視して、あっという間に着物を剥ぎ取る。
『本当に大丈夫だから…わっ!』
とうとう長襦袢姿になったあきらを、家康が軽々と抱き上げた。
そのままゆっくりと湯船に向かうとザブンと湯の中に飛び込む。
ザバーッ!
湯船から湯が溢れ出る。
『きゃーっ!』
『あっはっはっはっ!』
その中央には、悲鳴をあげるあきらと大声を出して笑う家康がいた。
『もう、何するの!頭からずぶ濡れじゃない!
あ、家康が大声出して笑ってる!』
『あっはっは!…あ、本当だ。』
本人も知らないうちに大笑いしていたらしい。
『こんなに大笑いしたの初めてかも。子供の頃から気を許せる人も いなかったからね。あきらのお陰だ。ありがとう。』
そう言うと、家康が優しく口付けを落とした。
『ん…。』
なんだか家康の口付け、甘い…。