第49章 あなたの為なら☆謙信
あれ…?
つまらない事をいちいち言うな、って思われてるのかも。
『あのー、細かい事をわざわざ報告して、すみません!』
あきらが おずおずと謝ると、
『細かくないわ!』
珍しく謙信が声を荒げた。秀吉の方に向き直り叫ぶ。
『豊臣秀吉!貴様がこの部隊の将か?』
秀吉がピクリと眉を上げる。
『そうだが、それがどうした?』
冷たく返答する秀吉に告げる。
『この戦、しばし休戦だ!』
唖然とする秀吉を無視して、謙信がヒラリと馬を降りた。
そのままズカズカとあきらの方へ近付いて来る。
えっ!えっ!?何!?怖いっ!
無意識に馬を後退りさせようとするが、謙信は既にあきらの足元まで やってきていた。
おもむろに大きく両腕を広げると一言、
『来い。』
とだけ言う。
躊躇いながらその腕を見つめていると、謙信が もう一度繰り返した。
『来い。愛しい女が傷つくかもしれん戦など、する気はない。』
『謙信…さま?』
今、なんて…。
『来ないなら、こちらから行くまでだ。』
謙信はサッと紅に跨ると、そのままあきらを背中から包み込むように抱きすくめた。
『弱い男はつまらんが…女は弱くても構わん。俺に頼れ。甘えろ。
ずっと俺の側に置いてやる。』
そういえば少し前に似たような事…。
〜〜〜
『俺と戦えるまでに強くなれ。弱い男はつまらん。強くなったなら、ずっと俺の側に置いてやる。』
〜〜〜
『私は弱いですけど、謙信さまと戦えてました…よね?』
『ああ、俺の負けだ。』
そう言って謙信は、穏やかに微笑むのだった。