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イケメン戦国/偽りの君

第49章 あなたの為なら☆謙信


『っ…。』

苦渋の表情を浮かべた秀吉だが、それ以上 何も言わなかった。

数刻が過ぎ、秀吉率いる騎馬隊が陣を立つ。
あきらも紅に跨り、隊列の真ん中辺りををゆく。
暫く一行は静かに歩を進めていた。

カアッ!!

一羽のカラスが頭上で激しく鳴いた。

隊列がピタリと止まる。あきらが慌てて前を見ると、『毘』と染め抜かれた旗が揺らめいている。
あれは…。

『謙信さま…。』

小さく囁いた時、あきらの後方が俄かに騒がしくなった。

今度は何!?

咄嗟に振り返る。
そこには、後方の兵が黒装束の一団と刀を交えている姿があった。

挟み撃ちにされてる!?

ふとガイドブックの一文を思い出す。

【織田信長との戦の際は、顕如の息子(教如)と手を組み織田軍を制圧。】

このままじゃ私達が危ない。
謙信さまを止めなきゃ!

あきらは騎馬隊の列を離れ、前方へと駆け出す。
前方では謙信の部隊との激しい争いが始まっていた。
その一番前で刀を振るう謙信の姿を見て取ると、あきらが大声で叫んだ。

『謙信さま!』

だが、あきらの声が耳に入らないのか謙信は戦う手を休めない。

『謙信さま、聞いて下さい!あなたは教如に騙されているんです!』

お願い、私の声を聞いて!

『駄目だ、見向きもしない。こうなったら…。』

あきらは手綱を握り直すと、ダッ!と謙信の前に躍り出て、刀を振りあげた。

ギンッ…!

鈍い金属音がして火花が散る。

『…ん?』

そこでやっと目の前にいるのがあきらだと気付いたらしい。

『あきら之丞?まあまあ刀は使えるようになったか。』

にやりと謙信が ほくそ笑む。

『ありがとうございます。…じゃなくて!謙信さま、どうか一旦 兵を引いて下さい。』

『何を言うかと思えば。そんな つまらん頼み事をする為に来たのか。俺は勝つまで兵は引かん。』

謙信が蔑むような目であきらを睨んだ。

『違うんです!謙信さまが手を組んでいる教如は、越後の領土を狙っています!戦って両軍が疲弊したところで反旗をひるがえすはず。
どうか私の話を信じて下さい!』

『織田側の人間に何と言われようが信じられんな。』

必死に説得するが、謙信の表情は変わらない。
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