第49章 あなたの為なら☆謙信
【上杉謙信は、生涯行った戦の殆どにおいて敗れた事が無く、『軍神』、『越後の龍』などと呼ばれ人々に恐れられた。
中でも武田信玄との5度にわたる川中島の戦いは有名である。
織田信長との戦の際は、顕如の息子・教如(きょうにょ)と手を組み織田軍を制圧。
上杉謙信は、その手で織田軍の全ての武将の首を落としたとされる。
その後は出家し、一切 表舞台に出ないまま、数年後、病にて その短い生涯を閉じる。】
『え…?顕如の息子と手を…?』
顕如って息子がいたの?それより、手を組みって…?
驚きのあまりページをめくる手が止まる。
『まあ、ほぼ元の史実通りではあるけど…信長側の武将の首を全て自分で斬るなんて、正気の沙汰じゃ無い。
確かに謙信さまは戦好きだけど、抵抗できない相手にそんな事するような人じゃない!』
佐助くん、怒ってる?
『そうだよね。じゃ、どうして…。』
パラリと次のページをめくり、あきらが言葉を無くした。
『あきらさん?』
何も言わないあきらの手から、ガイドブックをそっと抜き取り、そのページを読む。
【上杉謙信がこのような奇行に至った経緯には、過去に師弟関係にあったと言われる、織田家ゆかりの武将(あきら之丞)が関係しているようだ。
同盟を組んでいた教如は、越後を乗っ取ろうと画策していた。
それに気付いたあきら之丞を教如が殺し、教如を信長が討ち取るという泥沼の戦いになった。
その後、『我れが恨みの連鎖を断ち切る。』という言葉を残して、謙信は信長側の武将達の首を落としている。】
『なんだが凄いことに なってるね。』
遠くを見る目で佐助が呟く。
『佐助くん…ごめん。凄いことになるって解ってても私、現代には帰れない。…私が止めなきゃ!』
こくん、と頷くと佐助も同意した。
『そうだね、あきらさんなら止められるかもしれない。
いや、きっと止められる。
このガイドブックによると、教如達が今回の戦に乗じて何か仕掛けてくるのは間違い。気を付けて。
俺は、謙信さまの周りに変な輩が近づかないよう注意しておくよ。
それじゃ、俺は そろそろ…。』
『うん、佐助くんも気を付けて。』
じゃ、と言い残し、佐助が世闇に消えた。
あきらも背中を向けて天幕の中に戻る。