第7章 安土城へ ようこそ
『そうか。逃げた意味は解った。それなら、俺の色小姓になれ。ならば大した力はいるまい?。』
色…こしょう?胡椒…じゃないよね?
『あのー、それって…。』
あきらが訪ねかけた時、秀吉が大きな声で反論した。
『お館様、なりません!こいつはまだ信用出来ません。そんな輩を お館様のお側に置くなどっ!ましてや小姓などとっ!』
はて?なんで秀吉はこんなに怒っているんだろう?
首を傾げるあきらに、政宗が面白そうに教えてくれた。
『小姓ってのは、お館様の後ろに控えて身の回りの世話をする若い男のことだ。ま、色小性ってのは夜の相手も、な?』
えっ!?よ、夜の相手って、もちろん、あの…。
言葉にならず、あきらが口をパクパクさせていると、
『貴様は鯉か?』
ふっ、と信長が笑った。
『あの、どうしても ここにいなければならないのでしたら、こ、小姓は、む、無理なので、小間使いで結構です!!』
あきらは部屋に響き渡る声で言い放った。
『…言ったな。おい、秀吉、政宗、明日から たっぷりとこき使ってやれ。あきら之丞、ようこそ、我が安土城へ。
家康と三成にも同じように伝えおけ。』
ハッ、と秀吉と政宗の声がはもる。
3人で天守を後にしながら、あきらは、明日からどんな扱いを受けるのかを考えると、思わずため息が漏れる。
『ま、今夜はゆっくり寝てろ。明日から よろしくな?』
政宗の妖しい笑顔。
『さっきも言ったが、俺はまだ お前を間者じゃないかと疑ってる。変な事をしたら切り捨てるからな。そのつもりでいろ。
あと、夜は寒いから寝冷えするなよ?』
厳しいような優しいような秀吉の言葉。
あきらは、城のひと部屋をあてがって貰い、女中から新しい着物と袴を受け取った。
ついでに、サラシも。
(大きく無いとはいえ、さすがに胸は隠さないと まずいもんね。)
笑顔で女中に礼を言うと、顔を赤くして去ってしまったけれど。
とにかく、明日からも男として この城で過ごすことになるのか。
気を抜かないようにしなきゃ…。
あきらは早速、胸にサラシを巻き、新しい着物と袴を身につける。なかなかサマになってるんじゃない?
『考えても仕方ないし…寝るか。』
あきらは フッと蝋燭の灯りを吹き消し、床に着いた。