第47章 あなたの為なら☆信玄
相槌を打ちながら、あきらは神妙な顔をしている。
帰ると言っても、またワームホールが出現するかどうか解らない、と佐助が言っていたからだ。
ポン、とあきらの頭を大きな掌が撫でる。
『そう暗い顔をするな。世の中笑ってれば何とかなるものだ。
いつもの笑顔を見せてくれ。』
撫でていた手が後頭部を包み、信玄が ゆっくりと唇を重ねた。
信玄さま…。
『あのー、別に わざと取り込み中を狙ってる訳じゃないんだけど…いいかな?』
うわっ!
あたふたしたながら、あきらが信玄の手からすり抜ける。
居住まいを正しながら どうぞ、と言うと、佐助があきらの横に丸椅子を置いて座る。
『今日は、いい知らせと、
悪い知らせがありまーす。どっちから聞きたい?』
まーす、って…。
『じゃ、いい知らせから お願いします。』
あきらが言う。
『改めて計算してみたんだけど、俺達が戻って来た時から換算して一ヶ月後に、本能寺跡に またワームホールが発生する兆しがある。
つまり、今から2週間後だね。』
『本当!?』
思わず佐助の手を握る。ああ、と答えると、信玄があきらに気付かれないように鋭い視線を佐助に向けた。
『コホン。さて、次は悪い知らせなんだけど。
ワームホールを通れたとして、無事かどうか解らない。』
『…無事かどうか、とは?』
同じ思いであきらも佐助を見つめる。
『最初に移動した時と比べると、ワームホールの安定性が低下しているんだ。
もしかしたら、全然違う別の時代に飛ばされるかも知れないし…移動の衝撃に耐えられずに命を落とすかもしれない。』
しん、と部屋が静まり返った。
そんな…。
帰れないかもしれないし、死んじゃうかもしれないなら…。
『私が…連れて…来た意味が…。』
途切れ途切れにあきらが呟く。
それに被せるように、はっきりした声で信玄が言った。
『あきらのお陰で、俺はこんなに元気になった。
だから…一人で戻るよ。』
『それだけは絶対に嫌です!私も一緒に行きます!』
かぶりを振ってあきらが叫ぶ。
すると、それに従うように佐助も言った。
『俺も同意見です。一人より大勢の方が旅は楽しいですから。』
信玄は困ったように微笑むと、無言で頷いた。