第47章 あなたの為なら☆信玄
『礼を言うのは俺だな。』
あきらの横顔を愛でながら、信玄が小さく呟いた。
信玄は手術までの間、大学病院に入院する事になった。
『信玄さま。』
病室の入り口から、ひょこっとあきらが顔を出す。
毎日、朝から土産のお菓子を片手に現れ、ベッドの脇に置いてある丸椅子に腰掛ける。
『それにしても、あきら之丞は いつも ひらひらした物を履いているな。
佐助が履くような、ズ…ズボン?というのは履かないのか?そんなに足を出していたら寒そうだ。』
『あぁ、この時代、女性はどちらも履きますよ。』
『そうなのか。………女性?』
ん?私、なにか変なこと言ったかな?
あきらが首を傾げる。
信玄が両手で顔を隠し、うなだれていた。
『あきら之丞、500年後の未来から来たこと以外に、何か大切な事を言い忘れていないか?』
そのままの姿勢であきらに尋ねる。
『大切な事?大切な…はっ!!』
口を開けたまま暫く固まっていたあきらが、おずおずと告げた。
『私…本当はあきらという名前で…実は、女でしたっ!』
えへっ、と笑うと、信玄が指でコツンとあきらのおでこを小突く。
『もっと早く教えて貰えたら色んなことをしてやれたんだが。
ま、病が治ったら期待しててくれ。』
体を起こすと、チュッと音を立ててあきらの頬に口付けを落とした。
『きゃ…!?』
そしてあきらの肩を抱き寄せる。
『愛している、あきら。』
信玄さま…私も…。
コンコン!
『あのー、悪いけど お邪魔してもいいかな?』
慌ててあきらが飛び退くと、佐助がドアを開けて病室に入ってきた。
手術を明日に控えているので、諸注意を伝えに来たのだ。
『…ということで、今日は絶食です。コレは没収します。』
寂しそうな目をする信玄をよそに、今しがたあきらから受け取った お菓子を佐助が持ち去って行った。
… … …
翌日、無事に手術が終わった。
運良く良性の物だったらしく、予後も順調だ。
あきらが いつものように信玄の病室にやってくる。
『信玄さま、2週間もすれば退院出来るそうですよ。』
『そうか、早く治して帰らないとな。幸も心配してるだろう。』
『そうですね…。』