第47章 あなたの為なら☆信玄
『ね… 寝言ではありません!』
『では何故だ?何故、今から戦おうという相手の所に行く必要がある。相手方にも我らにも斬られるかもしれんのだぞ。
やはり貴様は脳味噌の足りん阿呆だな。』
くっ…何とでも言って下さい!
『理由は言えません!でも、信長さまに黙って行く事は…どうしても出来ませんでした。不義理な振る舞いを、どうかお許し下さい。』
『…俺が ここで斬ると言っても、考えは変わらんのだな。』
こくん、とあきらが頷くと、不意に信長に抱きとめられた。
突然の事に動揺していると、耳元で信長が囁いた。
『命を掛ける覚悟があるのなら行ってこい。
ただ、助けが必要な時は いつでも戻ってくるがいい。』
そして、ゆっくりと抱擁を解くと、行け、と手を払った。
深く礼をすると信長に背を向け天幕を出た。
佐助が隠れていた木陰から現れる。
『あきらさんは凄いな。どんな技か知らないけど、あの織田信長を納得させるなんて。』
関心している佐助に苦笑いを返し、二人で上杉軍の陣地へ向かった。
… … …
今にも出陣しようとしている上杉軍の陣に足を踏み入れる。
みんな忙しくしているせいか、あきらの事は気にしていないようだ。
兵の間をすり抜けて、奥にいる信玄の前へと歩を進めた。
『おお佐助、何処にいってたんだ?おま…。』
微笑みながら佐助に話しかけていた信玄の言葉がつまる。
『あきら之丞?なんで…お前がここに!?』
小さく頭を下げると一度、深呼吸をしてあきらが言う。
『どうしても信玄さまに聞いて頂きたい事があって、信長さまの元を出てきました。』
未だ唖然としている信玄を見ながらあきらが話し続ける。
『突然の話で驚かれるかと思いますが、私と佐助くんは、今から500年後の未来から来ました。』
眉間に皺を寄せ、信玄が二人の顔を交互に見る。
『ワームホールと言う不思議な穴のようなものが出来て、時代を飛び越えたみたいなんです。』
佐助が付け加える。
『ワーム…?俄かには信じ難いが、二人が言うのなら そうなんだろう。』
顎に手を当て困惑顏だ。
『それで…この二、三日のうちに、またそのワームホールが この辺りに出現するみたいなんです。
信玄さま、私達と一緒に来て下さい。』
『俺が、か?』