第46章 あなたの為なら☆三成
『光秀さまの斥候が掴んだ相手の兵力は、我々よりかなり少ないとの事ですので、今回は鶴翼の陣(両翼を前方に張り出し「V」の形を取る陣形)を敷いております。
両翼は、それぞれ政宗さまと家康さまにお任せ致しました。』
三成が言うと、信長が頷く。
そうだった、三成くんは戦法を考えるのが役目なんだよね。
頭がいいんだ、って誰かが言ってたな。
関心しながら聞き耳を立てていた時、にわかに陣の周りが騒がしくなった。
『?なんだろう。』
本陣に飛び込む様に入ってきた家臣が叫ぶ。
『敵襲ー!敵襲ー!家康さまの部隊が、上杉・武田の部隊と応戦中でございます!その数、およそ我らの三倍…。』
え…?
『なんだと!?』
誰の声かと声のする方を向くと、三成が目を見開いて立っている。
『謀(たばか)られましたか…。』
眉間に皺を寄せた三成の、いつもとは違う低い声に思わず背筋が凍る。
『急ぎ、私も出ます。』
三成が自分の部隊と共に出陣の準備を始めた。
『あのっ!私も行きます!』
咄嗟に叫ぶと三成が驚き目を瞬かせた。
『信長さま、宜しいでしょうか?』
許しを請うようにあきらが尋ねる。
『…命を粗末にしたら許さん。
が、貴様もナマの戦を知らねばならんな。行ってこい。』
必死に止める秀吉をなだめ、あきらも馬に跨る。
今、三成を一人にしてはいけない、そう思ったからだ。
… … …
三成率いる騎馬隊が矢のような速さで野を駆ける。
こんなに速く走るの、顕如達に襲われて以来かも…。
しかし あの頃に比べたら、だいぶ楽だ。
暇があれば馬に跨っていた甲斐があった。
『あきら之丞さま、馬の扱いが上手になられましたね。』
前方にいた三成が、あきらの横まで下がって来て言う。
あ、いつもの三成くんだ。
『良かった。』
『良かった…とは?』
『あっ、ごめん!本陣にいた時の三成くん、なんだか怖かったから…。』
あきらが慌てて説明する。光成は気まずそうな顔をしていた。
『怖がらせてしまい申し訳ありません。
自分の戦略が、敵の欺きに踊らされていたと知って頭に血が昇ってしまいました。』
『三成くんでも頭にくること、あるんだ。』
あきらが目をパチクリさせて そう言うと、フフッと三成の笑い声が聞こえる。