第44章 あなたの為なら☆信長
あきらは、そのまま倒れこみ意識を手放した。
… … …
痛っ…。
頭の痛みで目が覚めた。
ゆっくりと頭を横に向けると、額から手拭いが滑り落ちた。
『ん…?』
『目が覚めたか?あきら之丞。』
頭の後ろから低い声で呼び掛けられハッとする。
急いで振り向くと、そこには胡座をかいて座る信長がいた。
『の、信長さま!?どうして…あれ?私は一体…。』
上杉・武田軍との戦いに参加して、織田側が勝ったらしい所までは記憶があるんだけど。
『倒れた貴様を運ぶのは、これで2度目だな。』
あ、思い出した!
自軍が勝ったと思ったら気が抜けて、急に頭がクラクラして立っていられなくなって…。
『また信長さまが運んで下さったんですね。申し訳ありませんでした。』
『別に構わん。貴様の抱き心地は なかなかいい。』
信長が口の端を上げる。
だ、抱き心地って…。
頬を染めていると、信長があきらに覆い被さるように体を近付けて来る。
えっ!?な、なにをっ!!
取り乱すあきらを見下ろし不敵に笑うと、
『ふっ、貴様の額から落ちた手拭いを取っているだけだが?
何か期待したか?』
そう言って手元の桶に手拭いをつけ絞る。
『別に…わっ、信長さま、そんな事 自分でやります!』
起き上がり手拭いを奪おうとするあきらを片手で押し戻すと、信長が額に手拭いを乗せる。
『病人は大人しく寝ていろ。疲れが溜まっていたのだろう。そのせいで熱を出したのだ。
貴様は俺の後ろで怯えていろと言うたのに無理しおって、阿呆が。』
厳しい口調とは裏腹に信長の目は暖かかった。
『すみません、私も信長さまの力になりたくて。でも、いつも足手まといになってしまいますね。』
しゅん、と落ち込むあきらの髪を優しく信長が撫でる。
『お前は既に俺の力になっている。この先も俺の側を離れるな。』
『はい…ただ、私は信長さまに隠している事がございます。
それを知っても お側に置いて下さいますか?』
なんだ?と首を傾げる信長に、自分は500年後の未来から来た事、そして女である事を打ち明けた。
信長は微動だにせず、
『益々気に入った。』
そう言うと、そっとあきらの唇に口付けを落とすのだった。