第44章 あなたの為なら☆信長
『信長さま、皆さん、私の合図で全速力で馬を走らせて下さい!』
『なんだと?』
怪訝そうに信長が尋ねるが聞き捨て、胸元から革袋を取り出す。
その中から丸い玉を掴むと、勢いよく足元に投げて落とした。
ドーン!!
けたたましい音と共に白い煙が辺りを包み込む。
『走って!!』
あきらの叫び声に、皆が一斉に馬を走らせた。
そうだ、これも撒いとこう!
走り去りながら、閃光弾とマキビシを放り投げる。
背後が明るくなるのを感じた。
白い煙が消える頃には、信長達の姿はすっかり無くなっていた。
『くそう!信長共め!』
後には、歯噛みする顕如の軍勢だけが残されていた。
… … …
『はぁ、はぁ。』
もう大丈夫かな?
念の為に後ろを確認するが、追い掛けて来る者はいないようだ。
『あきら之丞、後ろばかり見ていると、殺られるぞ。』
信長が指差す先には青い旗印がはためいている。
今度は謙信らの軍勢と出会ってしまったらしい。
まぁ、こちらが本来の目的なのだが。
『疲れは何処かに捨て置け。行くぞ!』
信長の掛け声で、ワーッと家臣達が走り出す。
戦場は休み無しらしい。
が、丁度そこへ後続の部隊が合流した。
『政宗!家康!』
『おう、待たせたな。秀吉は手前で顕如の手下共を のしてる。ここは俺らに任せとけ。』
『ありがとう!でも、微力ながら一緒に戦うよ。』
『そうか?無理すんな。』
そう言うと敵兵の中に突進して行った。
『まったく政宗さんは…。あきら之丞の微力なんて、ほぼ無いのと同じなのに一人置いてくかな。』
ブツブツ言いながら家康が近付いて来る。
『失礼なっ!』
あきらが不満げに言うと、本当の事でしょ、と家康は取り合わない。
面倒臭そうに、斬りかかってくる敵兵をあしらう。
話しながら この動き…家康って以外と強いんだな。
思いながらあきらも刀を振るう。
織田軍は徐々に巻き返し、謙信らの軍勢は敗走し始めた。
良かった、相手が逃げ出して行く。
ハァハァと浅い息をするあきらの額から大粒の汗が流れていた。
あれ…なんだろう、頭がクラクラする…。
あきらは何とか馬を降りると刀を地面に突き立て片膝をついた。
『どうした!?』
頭上から信長の声がするが反応する事が出来ない。