第6章 出会い☆秀吉・政宗
あっという間に蹄の音は近付き、目の前に二頭の馬と それにまたがった人影が見えた。
『やっと見つけたぜ。』
『お前か?お館さまを助けた命の恩人っていうのは。』
2人が それぞれに口を開く。
あきらは考えていた。
逃げても馬の脚には叶わない。それどころか、下手に逃げたら間違いなく追い掛けられて殺されるかもしれない、と。
あきらは小さく息を吸うと、自ら名乗った。
『私は名も無い武家の息子で、あきら之丞と申します。
先ほどは、たまたま燃えている寺の横を通りかかりました。
もしや中に逃げ遅れた僧がいるのでは?と心配になり中に入りましたところ、信長さま…と仰るお方がおられましたので、お助けした次第でございます。』
…なるべく男らしく堂々と聞こえるように…話したつもりだけど。
背中を嫌な汗が一筋流れ落ちた。
少しの間があって、タレ目の男の人が口を開いた。
『お前の話は解った。だが、判断を下されるのは信長さまだ。
俺たちと一緒に来て貰うぞ!』
う、タレ目のわりに恐ろしくて目が反らせない。
『おい秀吉、あんまり怖い顔をするな。こいつがビビってるぜ。
おい、お前。反論は許さねぇ。俺の馬か、こいつの馬か、どっちに乗るか決めな。』
右目に眼帯をした男にジロリと睨まれる。
『政宗の馬は早いが荒いぞ。…どうする?』
どうするって言われても…。
『はっ、まどろっこしいな。よっ!』
『うわっ!!』
言うが早いか、政宗はあきらを片手で ひょい!と馬上に乗せた。
『な、なにするんですかっ!?まだ一緒に行くとは…。』
『反論は許さねぇと言ったはずだぜ。秀吉!急ぐぞ!』
政宗はニヤリと口の端で笑い、颯爽と馬を走らせた。
秀吉も それに並んで馬をかける。
(ぎゃぁぁぁぁぁぁぁーーー!!)
声にならない声を必死に堪える。
なんなの!?馬って こんなに早いの!?体がっ…持ってかれるっ!?
『しっかり捕まってろよ。飛ばすぞ。』
ま、まだスピードあげるのーーーっ!?
… … …
どれ程たった頃だろう?
政宗の腕の中から、すやすやと寝息が聞こえ出した。
『…寝たな。』
『寝たのか!?恐れていた割には、なかなか肝が座ってるんだな、あきら之丞とやらは』
秀吉が呆れたように呟いた声はあきらには聞こえない。