第11章 【光秀 ~準備編~】
「一つって・・!! じゃ他にも!?」
光「これ以上は秘匿と言う事だ。手の内を相手に見せても俺に得は無いからな。」
光秀は家に上がり、囲炉裏に火を着ける。すると少しするとパチパチと言う音がし始めた。そこに茶釜を掛けた。
光「突っ立っていないで、ここにきて火に当たれ。寒いであろう。」
麗亞は言われるまま囲炉裏の側に来て座る。茶の用意をしている光秀をみていたが、スッと立ち上がって光秀の側に行く。
「私が、やります・・・。」
光「あぁ、そうか、では頼む。あまり自分で茶の支度はしないのだが・・・。」
背の低い戸棚らしきところを開けると、茶筒がはいっていたので、それを取り出した。
「お茶をしないって、今までここに居る時は何を飲んでいたんですか?」
光「あぁ・・・。湯を沸かしてソレを飲んでいた。味が有ろうと無かろうと、温かい飲み物には違いないからな。」
「確かに、白湯でもいいですけど、味気ないですよね。」
光「味といったものには興味がない。口にさえできればいいのだからな。」
諦めたように笑う光秀に麗亞はぽつりと言う
「つまらなくは・・・ないですか?」
光「今まではそんなに苦にもならないし、つまらないと思った事はないな・・・。そういうものだと、思っていたからな。」
茶釜の湯が湧く音がする。麗亞は急須に茶葉を入れる。それを見て光秀が、茶釜を囲炉裏から外し、急須に湯を注ぎこんだ。
少し蒸らした後、麗亞は湯呑にお茶を注ぎ入れて光秀の前に差し出した。
「どうぞ・・・・・。」
光「あぁ・・すまない。ちゃんとした茶は久しぶりだな・・・。」
そういうと湯呑を手に取り口に運ぼうとする。すると、鼻に緑茶の茶葉の香りがスーっと入ってきた。今までこんな香りなど感じたことが無かったのに。
不思議に思いつつも一口茶を啜る。
(?!何だ?この茶は・・・・。ちゃんと味も風味もする・・・。何故だ?)
思わず目を見開いた。麗亞は光秀の顔をチラチラ見ながら自分も茶を飲んでいた。
「どう・・・・・・ですか?」
光秀の普段にはない表情を見ながら、恐る恐る聞くと
光「あぁ・・・なぜだろうな。今まで感じたことない茶の味がする。何か入れたのか?」
「え?・・・特に何も入れてませんが。茶葉以外は・・・。味、おかしいですか?」