第11章 【光秀 ~準備編~】
「ん・・・ぅ・・・」
頭の中がぼぅっとしてきて、体中の血が沸き立つように熱くなる。突然の口づけなのに、でも嫌じゃなく受け入れている自分が信じられない。
チュ・・と音を立てて離れた唇。麗亞の額に光秀の額が付けられ、間近でかすかに笑みをたたえた光秀がささやく。
光「どうした・・?これだけでもう、ぐずぐずになってしまったか?まだ足りないか?・・・」
頬を赤らめぼんやりしていた麗亞はハッとし、光秀の胸に両手をついて引きはがした。
「な・・・なにするんですか・・・とつぜんっ・・」
光「何って、口づけをしたのだが解らなかったか?」
ニヤニヤとからかうような眼差しを向ける光秀にまたからかわれたのだと思い少しむすっとする。」
「もうっ・・からかわないでください!!」
光秀は麗亞の顎をクイっと指で掴み上を向かせる。
光「俺は至極真面目なんだがな・・・?」
「も・・・もういいですから・・・。」
心臓が破裂しそうなほど鼓動を刻んでいる、これ以上からかわれたら、もう心臓が持ちそうになかった。
(これも、皆・・・光秀さんの意地悪。なんだよ・・・ね・・・。)
心の中でふと考えるとなんだか胸がズキリと傷んだが、この痛みがどういう痛みなのかその時の麗亞は気づかないままだった。
光「さぁ、お遊びはお終いだ。そろそろ城に帰らねば、行くぞ。」
光秀は麗亞から離れ襖を開ける。行燈の光が差し込んでその眩しさに思わず麗亞は目を細めた。
くるりと首だけ振り返ると光秀は座り込んだままの麗亞に告げた。
光「どうした?行かないのか?このままここで一夜を共にするか?」
「い・・・嫌ですっ!」
慌てて立ち上がると光秀の後をついて行った。
外に出るともう薄暗くなってきて夕日が路地の出口の方へと差し込んでいる。
「もうこんな時間になったんですね。」
裏路地から表通りに出た二人。周りでは段々人気が無くなり、皆、家路へと急いでいるようだ。あちこちから、夕餉のいい香りがしてきた。その香りにつられるように急に麗亞のお腹がキュゥゥと小さくなった。
「っ・・・!!」
光「おや、早く帰らねば腹の虫が暴れてしまうな。」
揶揄されて、顔がブワワッと赤くなるのがわかった。それをみてふと優しく光秀が笑った。