第9章 【顕如・ほっこり編】
顕如に連れられてやって来たところは町はずれの、寂れた廃寺だった。それでも、ちゃんと手入れや片付けはされていて顕如のまじめさとマメさが伝わってくる。
「廃寺ってことは、法主様が居ないお寺なんですね?」
顕「あぁ、何らかの理由でお寺を続けることができなかったんだろう。」
寂しそうな顔をした顕如になぜだか、胸が締め付けられた。
(この人は、一度お寺を焼かれたんだよね・・・・。だからきっとお寺がこういう風になるのはとてもつらい事におもうのかもしれない。)
「わ、私の居た時代のお寺はみんなとても盛っているんですよ。廃寺とか見たことが無くて。」
中に入ると、すぐそばの部屋に通された。
顕「ここで待っていてくれ。手当てをする道具をもって来る。」
真ん中に火鉢が置いてあるだけの殺風景な部屋だ。暫くすると、顕如が道具を持って入って来た。
顕「とりあえずこれくらいだが間に合うか?」
中を見ると一通りあるようだ、傷薬も少しある。
「助かります。」
麗亞は猫を畳に置くとそっと外から色々な所を確認する。すると左足に擦り傷を確認する。それ以外は何もないようだが・・・。
「とりあえず、脚を手当てしないと・・・。」
手際よく、傷薬を塗り清潔な布を脚に巻いていく。
あとは・・・どうしよう。
「あの、何か、ワラとかありませんか?あと小さい木箱とか・・・。」
顕「あぁ、たしかここに打ち捨てられていた箱が。ワラは・・・ちょっと待っていろ。」
息は有るものの辛そうにしている子猫を抱きかかえながら。麗亞は子猫に言葉をかける。
「がんばって。元気になって。おねがい・・・。」
祈るように言葉をかける。それからしばらくたった時顕如が箱とワラを持ってきた。
顕「先ほど来る途中にあった民家でワラを貰って来た。これでいいか?
「ありがとうございます!!」
麗亞は箱の中に藁をたっぷり敷き詰めると猫をそこに寝かせて手ぬぐいを掛けそしてまた周りをワラを乗せる。
「外からの傷は手当てしましたが、中までは分かりません。とりあえず、寒くないようにしておかないと体力がなくなってしまいます。あとは・・・。」
目を伏せる麗亞の後に顕如がポツリとつぶやく
顕如「この猫の生命力だけ・・・という訳だな。」
「はい・・・・。」