第9章 【顕如・ほっこり編】
「駄目っ!!!」
浪人を突き飛ばすと、慌てて子犬を拾い上げた。弱々しく震えているが、まだ息はある。
「よかった・・・。でも・・・早く手当てしないと・・・。」
浪1「ふふん、そんな所に居やがったか・・・。大人しく俺達と行こうぜ・・・。」
ぐいっと、右腕を引っ張られて立たせられる。
「いたっ・・!!!離してよっ!!!」
浪2「威勢のいい女だぜ・・・。とっとと連れて行っちまおうぜ。」
浪1「いや・・・こんな路地の奥になんか誰も来やしない。また途中で逃げられたら面倒だ・・・。ここで済ませちまおうぜ。」
そういうと、バンと麗亞を突き飛ばした。
「やっ・・・!!!」
子犬が手元から落ちて道の端に転がった。
「あっ・・・」
子犬を抱きあげようと起き上がろうとした時浪人の1人が麗亞に覆いかぶさって来た。腰のあたりにドンっと座られて体が起こせなくなった。
「どいてくださいっ!!! ヤメテっ!!」
暴れるが、浪人のもう一人が両手首を捕まえて地面に縫い止める。ちょうど万歳の格好にさせられたのだ。
上に乗った浪人が、麗亞の着物の合わせ目に手を入れようとした時だった。
シャラン・・・・
浪1「うっ・・・・・。」
上に乗っていた浪人がユラリと・・・揺れたかと思うとばたんと倒れたのだ。
「?!!!えっ?」
もう一人の腕を抑えていた浪人もその次の瞬間。ガツっ・・と言う音と共に飛ばされて後ろへと倒れた。拘束が解かれた麗亞は起き上がって音のした方へと目を向けるとそこには。
「・・・顕如さん!!!?」
錫杖を手にした顕如が立っていた。
顕「大丈夫か・・・?」
「あ・・・ありがとうございます。」
手を差し出されて立ち上がると、ふと思い出したように道の端に倒れた子犬を見つけ、慌てて抱き上げた。まだ温もりがあるが、弱々しく息を吐き、震えていた。
「大変・・早く・・・。」
側に来た顕如がその子犬を見た。
「さっき私を助けようと浪人に向かって行ったんですその時に蹴られてしまって・・・早く手当てをしないと・・・。」
顕「では、こちらに来い、この先の廃寺に身を寄せている。そちらで手当てしよう。助かるかはわからぬが。お前の事であろう、見捨てることもできまい?」
「はいっ・・・有難うございます!!」