第5章 【徳川家康・準備編 上】
満点の星、そして丸く輝く月。そして温かいぬくもりを感じながら、微睡む麗亞。
(温かい。そっか温泉にはいってるんだもん。でも、そろそろ上がらなきゃ・・・。)
そう言いつつその温かさから離れたくなくて思わず目の前の何かをきゅっと掴む。すると誰かが自分の頭を優しく撫でてくれている感じがした。
「・・ん・・っ・・・」
うすぼんやりとしていた視界の前に、なぜか家康の顔が見える。ハッと目を覚ますと麗亞は家康の着物をギュッと掴んでいた。
(え?なんで?家康?お風呂入ってそれからその後どうしたっけ?私・・・。)
曖昧な記憶が頭の中を駆け巡る。
(あの時、家康と露天風呂に入ってて・・・。)
その後だ、突然茂みから子ザルが飛び出してきた時に家康に手を引かれて抱きしめられる格好になった。その時の家康の躰の熱さとお風呂に暫く入っていた時の熱さがどっと押し寄せてきたのだ。
離れるに離れられず、それでも離れたらなんだか見えてしまいそうなそんな危うい距離に。心臓もバクバクになって一気に体温も急上昇。すると目の前が段々と暗くなっていったのだった。
その後の意識はもう麗亞には無い・・・。
(という事は・・家康に私・・・。///)
その後の始末を全部家康にさせてしまった事。そしてこうやって無事に目が覚めたという事は、その後の看病も家康がしてくれたという事に、恥しさと申し訳なささでいっぱいになった。
(着替えも・・・家康がしてくれたんだよね・・・。ばっちり見られた・・よね?)
想像すると顔から火が出そうになる。
(どうしようどうしよう・・・どんな顔すればいいのっ?)
1人で心の中でワタワタしてると家康がそっと腕枕をしていない空いている手で麗亞の躰を引き寄せ、抱きしめた。
(つ-------っ!!!////)
完璧にホールドされて身動きが取れなくなる。家康は気持ちよさそうに寝息を立てている。
(寝てる・・・?どうしよう。起こすのも可哀想だし。でも、このままじゃ。)
そーっと家康の顔を見る。
(あ、まつ毛長い。肌も綺麗・・・。それに、寝てる時の方が凄く素直な顔してる・・・。)
いつも憎まれ口を叩く口も今はなんだか優しい微笑みを浮かべているように見えた。