第5章 【徳川家康・準備編 上】
そこに広がっていたのは満天の星空の下空には、丸く輝く月がのぼる露天風呂だったのである。
その麗亞声に思わず木戸の側に行き家康が声を掛ける。
家「どうしたの?何があった?」
心配そうに声を掛ける家康に麗亞は慌てて告げた。
「ごめんなさい、何でもないの凄く綺麗だったから・・・すぐお湯に入るから、家康も早く入って来て。寒いでしょ?」
そういうと麗亞はそっと湯に浸かった。
「大丈夫だよ~家康~。後ろ向いてるから~」
その声を聞いた家康が木戸を開けて入って来た。麗亞は家康を見ないように背中を向けた。
家「うわ・・・なにこれ?外なの此処。」
後ろで、お湯が揺れる。家康が湯に入って来たのであろう。
チャプ・・・と音が近づいて来る。
「ちゃんと入った?家康。」
家「もう大丈夫だよ入ったから。」
恐る恐る後ろを振り返ると近くに家康がやって来た。
「温度も丁度いいね。それに白いお湯なんだね。なんか肌に良さそう。」
お湯の白さにお互い、ホッと胸をなでおろす。
(これでお湯が透明だったらどうしようかと思った・・・。)
家康は両腕を露天風呂の縁に出して夜空を見上げた。
家「なんか凄いね、こんな温泉あるんだ…。」
「うん・・・凄い。お月様もまん丸で綺麗だよ。」
嬉しそうに家康に微笑みかける麗亞。
家(綺麗なのはアンタでしょ・・?こんなに嬉しそうな顔して。それに今は無防備な格好で俺の目の前に・・・。)
手を伸ばせば抱きしめられる、しかもお互い産まれたままの姿。その危うい距離感。なるべく麗亞の姿は見ないように見ないようにと意識を空へと向ける。
家(あーーー違う意味でのぼせそう・・・・)
そんな空を見上げる家康の姿、普段は着物で隠れている二の腕がなんだか、いつになく逞しくて、その男らしい姿に麗亞はドキドキと胸の鼓動が早くなっていた。
(家康って着やせするタイプなのかな・・・。あんなに腕逞しかったっけ?)
ちらりと見える胸板の厚さにもなんだか心持ちソワソワする。
(よくよく考えると男の人と二人きりで混浴って・・・私なんて大胆な!)
意識すればするほどドキドキが止まらなくなってくる。
「安土城には露天風呂とかないから、凄く新鮮だね・・・」
気を紛らわせようと必死に声を掛けた。