第5章 【徳川家康・準備編 上】
麗亞達が到着したのは、暮れ六ツの頃だったろうか、現代で言う所の夕方6時くらい、しかし12月ともなればもう五時過ぎには日も暮れているので、着いた頃には真っ暗になっていた。
家「部屋が無いって?!」
今日泊まる事になっている借りた民家に入って早々、衝撃的な事実を突きつけられる。
村人「へぇ・・・、何せこんな狭い村ですし、家康様だけと当初聞いておりましたから。」
なんでも、家康が泊まる事になっていた借りた空き民家には部屋数が無いとの事。
「あ、あの家康、私が急に行きたいってわがまま言ったんだし・・。もしあれなら私、他の同行の兵の人たちと一緒に雑魚寝でも構わないから…。」
それを聞いて家康が眉間に微かに皺を寄せていう。
家「そんな訳にはいかないでしょ?もう、いい、仕方ない一緒の部屋になるけどそれで構わない?」
「う・・うん・・・。家康が嫌じゃないならそれでいいよ。」
家「危なかった・・・これで政宗さんとなら確実に・・・・。」
ぼそぼそと独り言を言う家康。
「えっ?何か言った?」
家「何でもない!夜になって冷えてきてるから風邪ひくから。とりあえず中に入るよ。」
こじんまりした民家に入ると、囲炉裏があり、中で炭をおこしてくれていた村人が私たちに声を掛けてきた。
村人2「これはこれは家康様、わざわざこんな村にまで来て頂いて有難うございます。火は起こしてありますのでどうか温まってくだされ。もう少しで鍋も煮えます。」
「こんばんわお邪魔します。」
麗亞が村人にお辞儀をすると村人は目を見張る。
村人2「まぁ、なんと美しい姫様ではないですか。家康さまの奥方でありますか?」
家「お・・おくっ・・・/// ち、違うから、この子は織田家ゆかりの姫で、どうしても来たいというから連れて来ただけ。」
「あの・・突然お邪魔してごめんなさい。明日からなんでもお手伝いしますのでよろしくお願いします。」
村人2「姫様にできるお仕事が在るかどうかわかりませんが、わざわざありがとうございます。そうだ、この家の裏の方の離れの小屋に温泉があるのはご存知ですか?もしよろしければ入って行ってくだされ。」
そういうと村人はその民家を後にした。