第5章 【徳川家康・準備編 上】
ぱたりと、部屋の襖が閉められ、一人になった信長はポツリとひとりごちる。
長「さて、あの鉄仮面の家康がどう出るか・・・見ものだな。」
麗亞の入れてくれたお茶を口に含みながら、信長はニヤリと微笑んだ。
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「じゃ、行ってきます!」
秀「ちゃんと夜は寝るんだぞ?それと風邪ひかないように温かくするんだ。あと、危ない事は絶対にしないでくれ。それと・・」
心配性の兄ポジの秀吉さんが長々と説明をしているのをうんざりした様子で聞いていた家康は、しびれを切らしたかのように、馬に乗り込んだ。
家「秀吉さんそこら辺にしといてくださいよ、もう出立しなきゃ・・・。さ・・・手出して。」
ふと、言われるがままに手を出すとひょいっと引き上げられ家康の前に馬に乗せられた。
「あ・・あの自分で馬に乗るんじゃなかった・・の?」
家「道中狭い道もあるから、うっかり馬ごと落ちられたら困るから。」
秀「家康、しっかり麗亞を見ていてくれよ。とにかく危険な事と・・。」
また長い講釈が始まりそうだったのを途中で制する。
家「あーー分かりましたよ。傷つけることなく無事に連れ帰ってきますから。とにかくもう行かないと、日暮れまでには村に着かないといけませんから。急ぎますよ。」
三「麗亞様、どうかご無事で、家康さまと同行できないのが残念でなりません。私はこちらでまだ仕事が在りますゆえ、終わりましたらすぐ駆けつけます。」
うんざりした顔をして三成に冷たく告げる。
家「三成はここでちゃんと信長様をお守りしてていいよ、今回は俺だけで十分。すぐ帰ってくるから大人しく待ってて。」
政「いいなぁ~麗亞とお泊り旅なんて役得だよなぁ~。俺が代わってやってもいいぜ。」
ニヤリとほくそ笑む政宗にぴしゃりと家康の塩辛い一言が炸裂する。
家「政宗さんだと絶対信長様からの許可が出ませんでしたよね。」
わいわいと賑わう皆をよそに城の陰から光秀が皆の様子を見て、意味深な笑みを浮かべぽつりとつぶやいた。
光「気を付けろよ、猫が虎に変わる事もあるんだぞ麗亞」
しかしその声は他の者の声にかき消され決して麗亞の耳には届くことはなかった。