第3章 【武田信玄・準備編】
「信玄様は器用なのですね。」
まるで華がほころぶような笑顔に信玄は思わず見とれてしまう。
玄(その笑顔は反則だろう?気持ちが抑えられなくなりそうだ。)
心の中で自分自信を窘めながら、麗亞に気づかれないように大人なふるまいを装う。
玄「惚れ直したかい?」
「また、そうやってからかうんですから。」
口を尖らせてまた違う表情をする。
玄「俺はいつでも君に本気だよ?いつになったら真剣に考えてくれるのかい?」
そっと右手で麗亞の右手を掬い、その甲に軽く口づけしウインクをする。
「つっ・・・信玄様っ・・///」
頬がほんのりと赤みを帯びる麗亞をみて信玄は年甲斐もなく胸が高鳴るのを感じる。麗亞はその動揺を隠すかのよう信玄に告げる
「えっ・・と、この羽子板に絵を描いてはどうかと思うんですけど…。」
玄「ふむ・・・。絵か・・・。成程な・・・。」
「あ、でもこの時代には絵を描く色とか・・・あるのかな・・・?」
玄「・・・ある・・。顔料や炭など、自然のモノからできた絵の具があったはずだ。それを使えば、羽子板に絵を描けるはずだ。」
「素敵ですね。色とりどりの羽子板とか、子供達絶対喜びますね。」
無地の羽子板にまるで心の中で絵でも描いているようなそんな顔をする麗亞に信玄は心の中が暖かくなった。
玄(良い顔をする、未来ある若者の顔だ。この純粋な心に何とかこたえたい・・・。)
玄「さぁ、そうと決まれば、また市に行こうか。絵具を探しに。それにもう昼時だ、何か食べに行こう。」
「あ、でも、ご迷惑じゃ・・・。私もう帰ります・・・。」
玄「むしろ、今日は幸は佐助の所にいっているから一人なんだ、寂しく飯屋にいっても空しいだけなんだよな。君が居てくれると、きっとお昼もおいしいだろうな…。」
寂し気な表情をする信玄を見ると、なんだか放ってはおけない性分の麗亞は、まんまとその罠にはまるのである・・・。
「じゃ、お言葉に甘えてご一緒させて貰います。あ、お昼の後はお手伝いもさせて下さいね。」
玄「あぁ、喜んで、我が姫・・・」
そうして信玄は麗亞の手を取った。